2012年05月28日(月)
[AXIS]6月号 [AXIS]
◇特集[デザイナー、スポーツを語る]【★★☆☆☆】
趣味として、ときにストイックに、スポーツに向き合うデザイナー5人を取材し、スポーツがいかに日々の創造行為に結びついているかを探る、変化球的な特集です。
1.ダニーロ・ラゴーナ×車椅子テニス、創作ダンス
2.クリストフ・ディルケス×トライアスロン
3.レナート・モンタニエ×エクストリームスポーツ
4.ピーター・クシュニッグ×ランニング
5. 佐藤卓×筋トレ
人様の趣味の場をのぞいて、彼らの仕事にそれがどう作用するのかなんて、さほど引かれないテーマでした。ところが、なるほど人間の能力は奥深いなぁと感心し、思ったより面白く読めました。
スポーツと良好な関係を築くことは、創造力の筋肉を鍛えるばかりか、ライフデザインにも良い影響があるということも、行間から伝わってきます。また、小見出しが秀逸。
スポーツは日々の生活を支える営み/新生児のように自分の身体を発見する/ダンスはチームによる内面からの表現/あるもの、と、ないもの、の間で
まずは自分の身体を知ることから/中心は身体に、脳だけでねじ伏せない/サーフィンが教えてくれること/定点を保ち、中庸を目指す
続けて読むと詩のようですね。
◇カバーインタビュー[暦本純一]【★★★☆☆】
「人間の能力を拡張するAH(オーグメンティッド・ヒューマン)」の研究を行う暦本純一氏へのインタビュー。小難しい研究なのですが、平易な言葉を選び、ときに『ドラえもん』のエピソードを交えてと、伝わりやすさに務めた語り口で気持ちよく読めます。実現した暁には、それこそドラえもんのポケットから出てきても不思議じゃない感じの研究です。
早い実現を期待するのが、日常生活の中で積極的に笑顔を作ることを促す「Happiness Counter」というシステム。たとえ作り笑いであっても、笑顔を見せることで自分の気持ちの向上や体調の改善効果が期待でき、人をリラックスさせもします。
たとえば、満員電車のドアが笑顔を見せないと開閉しなかったら、混み合う車内にギスギスした空気が充満することもなくなるのでは?! と、凡人の考えつくことはこの程度ですが、人間の能力を拡張したことで一緒に生まれる効果が、人を幸せにすることであってほしいですね。
◇トピックス[高齢者と若者が集う場]【★★★★☆】
――チューリッヒに生まれたシニアデザインファクトリー
NPO団体の「シニアデザインファクトリー」は、高齢者と若者のジェネレーション・ギャップをデザインで埋めていくという活動をしています。
主な活動は、高齢者らにデザインと制作を発注し、彼らの高いスキルで作られた製品を正当な価格で販売するというもの。これまでのヒット製品を見ると、風合いや色合い、存在感など、どれをとっても完成度の高さに驚きます。
慈善活動とは一線を画し、あくまでもビジネスパートナーとして尊重しあった関係を築き、ゼネレーション・ギャップを埋める一つの理想形がそこにあります。高齢化社会まっただ中の日本にとって、早急に学ぶべきことの多いリポートです。
扉写真も良いです。90歳のおばあさん先生が30、40代の女性に編み物を教えているワークショップの一場面で、テーブルの端に腰を掛けて、おしゃれな装いの自分を写真撮影する、先生とは別のおばあさんが実にチャーミング。ほかの人たちの様子からも、充実した時間を過ごしていることが伺えます。
[今号の評者、建築&住宅メディア研究会 大津なほ子]
◇大津なほ子(おおつなほこ)
フリーランスライター。住宅設備機器業界誌、出版業界紙記者を経て、1995年からフリーに。書店訪問、旅情報、生涯学習者へのインタビューで全国各地を歩く。近年、住宅設備から器へと興味を広げて建築分野を勉強中。
◇建築&住宅メディア研究会
代表/細野透
会員/家成俊勝、大津なほ子、北原さと子、黒崎敏、神徳香子、後藤雅浩、今野靖人、菅原麻衣子、殿木真美子、奈良賢史、萩原詩子、守山久子、脇坂圭一
Posted by 管理者 at 11時30分
2012年05月25日(金)
[ELLE DECOR]6月号 [ELLE DECOR]
◇特集[グリーンと暮らそう!]【★★★☆☆】
6つの住まいをお手本にして、グリーンとの暮らしを始めようと呼びかけます。元小学校を改装した画家のアトリエの、大胆な草花のあしらいに始まって、水を満たした器に花弁を浮かべる清楚な雰囲気のものまで、様々な緑との付き合い方があります。
1.パリ郊外/アートと草花がおしゃべりする、緑のアトリエ
2.パリ/'50sの名作たちが語らう、人気アーティストの美しき庭
3.シドニー/海辺の邸宅に流れる、アンティークと植物の協奏曲
4.アメリカ/鮮やかな芝と木立に囲まれた、フィリップ・ジョンソンの名建築へ
5.ローマ/フェンディの娘が復元した、緑あふれるローマ貴族の館
6.オーストラリア・ハミルトン島/
イタリア人建築家が手がけた、南半球のグリーンパラダイス
6幕からなる美しい舞踏を観ているような、余韻に浸れる特集です。
緑で潤う空間には、そこに置かれた家具や食器がカラフルであってもシンプルであっても、どちらも映えますね。緑という色が持つ、包容力なのでしょうか。もしもグリーンにあふれた空間がキャンバスであったら、白いキャンバス以上に自由に絵が描けそうです。
◇[6つのヒントで考える、美しい収納]【★★★★☆】
整理整頓が上手な人は、こともなげに言います。「元の場所に戻せば良いだけ。簡単でしょ?」と。
言われてみればわずかなステップですが、片付け下手には途中に見えない壁が存在していて、到達しえない道のりなんですよね。そんな悩みを抱えている人に贈る小特集です。
一見すると、「棚を使って見せる、隠す」「重ねる、つなげる、ユニットシェルフ」「どこでも使える、動く収納」と、取り立てて新しい提案があるわけではありません。
壁面収納の提案など大がかりなヒントに目を奪われず、すぐ実践できる小粒のアイデアにご注目。キラリと光るアイデアに触発されて自分なりのアイデアが浮かんでくると、片付ける気がムクムクと湧いてきます。
自分の気持ちにフィットする小さなアイデアに出合うために、目をこらしての一読をお勧め。
◇[24時間過ごしたい、バスルームの作り方!]【★★★☆☆】
24時間だなんて大げさなタイトルですが、「いきなりフルリフォームを目指さなくても、水栓を交換するなど小さなトライアルでもぐっと心地良い場所に変わる」と、提案していることは誠実。
「ナチュラル素材」「上質なユニットバス」「大胆なモノトーンのバス」の3テーマを掲げ、それぞれのテイストのバスルームに合う機能や水洗金具、小物の情報をまとめています。
数百万円のバスタブのそばに数千円の小物の紹介を配置しても、そう違和感を覚えないところに、誌面づくりの上手さを感じます。恐らく、バスタブも小物も、バスルームに欠かせないアイテムとして公平に扱っているからなのでしょう。
小ページの企画ですし、キャプションが中心で読む部分が少ないにもかかわらず、以前は好みではなかったモノトーンの暗いバスルームが、案外とリラックスできる空間のように感じ始めたのも、提案商品の組合せのマジックかも知れません。
[今号の評者、建築&住宅メディア研究会 大津なほ子]
◇大津なほ子(おおつなほこ)
フリーランスライター。住宅設備機器業界誌、出版業界紙記者を経て、1995年からフリーに。書店訪問、旅情報、生涯学習者へのインタビューで全国各地を歩く。近年、住宅設備から器へと興味を広げて建築分野を勉強中。
◇建築&住宅メディア研究会
代表/細野透
会員/家成俊勝、大津なほ子、北原さと子、黒崎敏、神徳香子、後藤雅浩、今野靖人、菅原麻衣子、殿木真美子、奈良賢史、萩原詩子、守山久子、脇坂圭一
Posted by 管理者 at 11時30分
2012年05月24日(木)
[日経アーキテクチュア]4月10日号 [日経アーキテクチュア]
◆[日経アーキテクチュア]4月10日号・日経BP社・1300円
◇特集 吹き抜けのワナ【★★★☆☆】
「冬寒く夏暑い」を克服する解決策とは
環境工学研究者の東京大学・前之准教授は吹き抜けにはリスクがあると指摘する。一体どういうことか、事例とともに建築家の難波和彦氏との対談も収録した特集を見ていこう。
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1.一見魅力的だが実は問題だらけ
冬寒くて夏暑い、対策取らねば不快な空間に
前真之准教授が指摘する吹き抜けの問題点は温熱環境にある。前氏は空気の流れを赤外線サーモグラフィを用いて視覚的に表示することで、住宅内の温度分布のシミュレーション結果を示した。
結果によれば、吹き抜けのない1フロアの空間の場合は、通常のエアコンで十分なのに対して、2層吹き抜けの場合には暖気が全体に広がり、温度ムラが目立つことが明らかとなった。
エコハウスと謳っていても、吹き抜けを設けた場合、エアコンを主暖房とすることには無理があるのだ。その点、床暖房は有効だというが、2階の暖房を怠るとコールドドラフトが生じるという。こうした問題点を解決するためにまずは、高断熱・高気密の徹底が大前提という。
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2.天井のファンで夏の温度ムラを解消
輻射熱冷暖房と併用した「箱の家124」
建築家の難波和彦氏は「箱の家124」で2層吹き抜けのリビングを設けた。冷暖房は輻射熱を中心に賄う方針として、冬季の暖房として、床下に敷き詰めた厚さ6cm程度の水の袋による水蓄熱式床暖房「アクアレイヤー」を採用した。これは夜間電力を利用して蓄熱して、24時間稼働させる方式だ。
次に、難波氏は夏の冷房として、輻射熱冷暖房システムのPS H−RCを組み込んだ。これはパイプに冷水を通し、輻射熱で温度ムラのない冷房を実現するシステムだ。
こうして夏冬ともエアコンのない計画としたが、結果として温度ムラが生じてしまった。解消のために設置されたのがシーリングファンだ。現在、温度差の問題は解消しているという。
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3.屋根瓦の余熱を吹き抜け内で循環
省エネを徹底した「豊岡市エコハウス」
兵庫県・豊岡市では、環境省が推進する環境共生型住宅のモデル事業として豊岡市エコハウスが建設された。快適な吹き抜け空間の実現のための手法として何が必要なのか。
同モデルハウスでは冬季、昼間の日射で50度にまで暖まった屋根瓦の熱を利用するため、屋根下の集熱層からファンを経由して循環ダクトで床下に送風して、床下から1階に排出するシステムが組み込まれた。室内で吹き抜けの頂部に上昇した空気は、再び集熱層で暖められ、先のサイクルを繰り返す。
夏季は、屋根に設けた通風口の窓で暖気を排出する一方、床下換気口を開放して冷気を吸い込む。また、1、2階を隔てる「水平折戸障子」が設けられるなど建築的な仕掛けも盛り込まれた。
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4. 「吹き抜け」と「環境設計」の接点は?
床暖房と局所暖房の組み合わせ方法がカギ
難波和彦氏と前真之氏の対談では、前氏が主張する吹き抜けのリスクに対して、吹き抜けのある住宅を120棟以上設計してきた難波氏が、建築家として家族のあり方が変わるような空間の提案をすべきだと主張する。
難波氏が到達した「一室空間」としての空間のあり方を実現するために、環境維持手法として導入されたのが床暖房システム「アクアレイヤー」である。しかし、前氏はエネルギー効率が低い、ランニングコストが高い、立ち上がりが遅い、といった床暖房の欠点を主張する。
前氏は、エアコンだけで合理的に空調する時代が来ているとして、イニシャルコストの低さ、エネルギー効率の高さ、急速な性能の向上といった利点を挙げる。また、大開口部が放熱源となるため、ダイレクトゲインを組み込んだとしてもうまく機能するとは限らないと厳しく突っ込む。さらに前氏は、周辺環境にもよると前置きしながら、太陽熱でコンクリートスラブを暖めるシステムとしてOMソーラーも有効な手法としてあげる。
吹き抜けを否定する訳ではない、という前氏であるが、建築空間と環境システムが乖離する事例を多く体験した実感とシミュレーションから得られた結果による指摘は、厳しくとも乗り越えなければならない課題だ。その影響を一番受けるのはもちろん生活者なのだから。
◇建築巡礼 古建築編・古代〜奈良【★★★☆☆】
大きくて小さい空間-東大寺大仏殿
(初代は751年、現大仏殿は1709年)
宮沢氏と磯氏がいわゆるマスターピースを訪問する建築巡礼だが、古建築編へと展開している同連載を取り上げてみたい。今回は「東大寺大仏殿」である。
幅約58m、奥行き約51m、高さ約49mの大きさを持つ東大寺大仏殿は、長らく世界最大の木造建築であったが、近年「大館樹海ドーム」(伊東豊雄設計、1997年)にその座を譲ったことが紹介される。その大仏殿、創建は奈良時代だが、平安末期に消失し、鎌倉初期に重源によって再建され、さらに、その後の火災により、江戸期に建て替えられている。これが現代われわれが見ることのできる大仏殿だ。
創建当初の和様から、重源による大仏様、さらに江戸期に至り正面へ唐破風が付加され様式が不明瞭になったという。この巨大な建造物を磯氏らはメガストラクチャーと呼び、直径43m、天井高43mの「パンテオン」、また直径30m、高さ54mの「アヤソフィア」のドームと比較する。
磯氏らの比較は小ささの比較へと展開する。釈迦の身長を10倍した寸法である高さ15mの大仏にとって、大仏殿は窮屈な空間であるというのだ。そこで持ち出されるのが千利休による二畳茶室である「待庵」だ。
なるほど、外観としての巨大さだけではなく、内部に据えられる大仏の視点からすると極小な空間であるという視点はあり得る。初代(751年)の和様による空間から、2代目(1195年)、そして3代目(1709年)と次第に大仏が据えられた内部空間が小さくなっていくことを表した宮沢氏のスケッチも健在だ。大きさと、小ささという視点を持つことで古建築を訪れると解釈の幅が広がりそうだ。ちなみに、「せんだいメディアテーク」は約50m角とわかりやすい大きさなのだがその高さは約35m。
◇山梨知彦の名建築解読【★★★☆☆】
第3回 収蔵庫の「闇」が五感を研ぎ澄ます-海の博物館
(収蔵庫は1989年、展示棟は92年)
日建設計の山梨知彦氏が名建築をとりあげ解読する連載。今回は、内藤廣氏が設計を手掛けた「海の博物館」だ。三重県鳥羽市にある海の博物館は、収蔵庫(1989年)と展示棟(1992年)の3棟からなる群造形を持つ。
内藤氏が「素形」と言い表し、自らの主張を消した建築を提示した海の博物館は、建築学会賞受賞にも表れているとおりこの時代の評価の高みを極めた作品だ。
海の博物館を構成する展示棟と収蔵庫は興味深い対比を見せる。展示棟が木造でつくられているのに対して、収蔵庫はプレキャストコンクリート(PCa)造によるのだ。このことが、自然光を取り入れ、木質の集成材現しによる暖かみのある内観をつくり出す展示棟に対して、薄暗く、音の遮断された闇の収蔵庫という対比を生み出すのだ。
山梨氏は、収蔵庫の光を抑えた薄暗さが深遠なる印象を抱かせ、人間の五感を喚起すると評する。同時に、氏は、気温、湿度、気流、熱輻射、代謝量、着衣量を踏まえた冷温感指標であるPMVのシミュレーションを行い、収蔵庫では機械空調がなくても温熱環境が安定することを示した。
単に、表現としての「素形」ではなく、環境としての合理性を合わせ持った海の博物館であるが、近年の建築家が提示する空間の多くが「白い」建築であるのはどういうことであろうか。海の博物館から、薄暗い内部空間に差し込む光が空間の精神性を体感させるロンシャンの教会を思い起こしたが、「闇」の空間が持つ「深み」が空間体験を印象深いものにするということは言えそうだ。
[今号の評者、建築&住宅メディア研究会 脇坂 圭一]
◇脇坂 圭一(わきさか けいいち)
名古屋大学准教授。1971年、札幌市生まれ。東北大学卒業後、建築設計事務所勤務。デンマーク・オーフス建築大学留学。東北大学大学院博士課程後期修了後、脇坂圭一アーキテクツ設立。東北工業大学、東北文化学園大学、東京芸術学舎にて非常勤講師。博士(工学)。建築学会東北建築賞研究奨励賞受賞。先日、取材のため宮本佳明氏の「ゼンカイハウス」を訪問してきました。
◇建築&住宅メディア研究会
代表/細野透
会員/家成俊勝、大津なほ子、北原さと子、黒崎敏、神徳香子、後藤雅浩、今野靖人、菅原麻衣子、殿木真美子、奈良賢史、萩原詩子、守山久子、脇坂圭一
Posted by 管理者 at 11時30分
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