建築雑誌オールレビュー

代表/細野透
会員/家成俊勝、大津なほ子、北原さと子、黒崎敏、神徳香子、今野靖人、
   殿木真美子、奈良賢史、萩原詩子、守山久子、脇坂圭一

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2013年05月20日(月)

[AXIS]6月号 [AXIS]

[AXIS]6月号・アクシス・1800円


◇特集[デジタルファブリケーションの未来図]【★★★☆☆】

 3Dプリンターやレーザーカッターの普及により、“メイカームーブメント”と呼ばれる新たなモノづくり革命が起こりつつあるとのことで、この特集です。紹介事例は次の7つ。

1.デジタル工作拠点は渋谷を目指す?
  市民工房ファブラボ渋谷/しぶや図工室

2.新しいメイカーを生み出し、修理に目を向けさせる
  ダニエル・チャーニーの「フィックスパーツ」

3.デザイナーが「デジタルファブリケーション」にワクワクする理由とは?
  ツナグデザイン代表 根津孝太氏

4.建築をプリントする未来 建設の新たな地平「D−Shape」

5.「リップ、モッド、ファブ」時代を見据える
  オートデスクのソフト開発戦略

6.製品アクセサリーの3Dデータを提供
  ティーンネイジ・エンジニアリングの「OP−1」

7.3Dプリンターが変えるモノづくりのこれから 田川欣哉×青木俊介

 なるほど、勉強になりました。3Dプリンターによって造形する行為が、医療現場をはじめ、ものづくりの場や建築分野などでの試作の域を出て、広く一般に普及しはじめてきたあたりを特集しているのですね。

 2のダニエル・チャーニーさんや、3の根津孝太さんのように、具体的に活動している事例もあれば、4のモックアップではなくプリントされた建築物を目指すイタリアのエリンコ・ディーニさんのような、夢を現実に変える旅に出発したばかりの事例もあります。

 トピックスの順番も大事で、今号の並びは3Dプリンタ−の今が分かりやすい流れになっています。




◇連載[ザ・プロトタイプ 039]【★★★★☆】

 今回は、tangent:(タンジェント:)の「KIHOU(キホウ)」を紹介。2種類の液体と空気の泡を利用した間接照明器具で、漆黒の中から湧き上がる、黄金色に輝く気泡のような灯りの幻想的なこと! 見開きページに展開されるシンプルな佇まいは、目が釘付けに。

 夜に照明を消した室内で点灯させたら、わずかに揺らめくであろう灯りがロウソクの炎のようで、日中の喧噪でストレスに晒された心がスゥーッと鎮まるのではないか……などと、想像の世界で「KIHOU」を色々なシチュエーションで点灯させてみました。面白いです。

 リポート内の「どこか生物的な感じがする不思議なプロダクト」という一文に触発されるまでもなく、勝手に想像が沸き出します。漆黒の揺らめきから現れる光の泡は、イマジネーションの扉を開けるスイッチの役割も担っているようです。




◇連載[産学共同の正しいやり方]【★★★☆☆】

 企業・団体と教育機関による産学共同を、毎号1プロジェクトを紹介する連載ページです。今号は、自動車用各種スイッチやキーロックなどの自動車部品メーカーである東海理化の取り組みをリポートしています。

 “名物産学”として注目が集まるのは、同社デザイン部のデザイナーがプロジェクトの期間中は毎週のように学校に赴いて、マンツーマンで学生の指導にあたる姿勢と、生み出されるプロダクト提案に魅力的なものが多いことから。

 同社が産学共同プロジェクトを開始したのは、会社の知名度を上げるためでしたが、モノづくりを目指す学生が減っていることに危惧を抱き、そうした学生を育てるプロジェクトの内容を練り、現在の形へと進化してきました。

 この紆余曲折を描いたリポートから、モノづくりすることが心底好きな会社だということが、じんわりと伝わってきます。それと共に、誌面で紹介されている6作品が実際に試してみたくなる機能やデザインで、ほかの作品もぜひ見てみたいと思わせます。




[今号の評者、建築&住宅メディア研究会 大津なほ子]

◇大津なほ子(おおつなほこ)
フリーランスライター。住宅設備機器業界誌、出版業界紙記者を経て、1995年からフリーに。書店訪問、旅情報、生涯学習者へのインタビューで全国各地を歩く。近年、住宅設備から器へと興味を広げて建築分野を勉強中。

◇建築&住宅メディア研究会
代表/細野透
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Posted by 管理者 at 13時30分

2013年05月16日(木)

[I'm home] 5月号 [I'm home]

[I'm home] 5月号(No.62)・商店建築社・1800円


◇特集 [FINLAND] 【★★★☆☆】

 大自然に囲まれた北欧の国・フィンランドは、伝統的に豊富な森林資源を用いた木造建築が盛んな一方で、自然と共存したモダンな住宅も独自の進化を遂げているという。事例は、モダンな住宅2件と郊外の森にある木造のサマーハウス2件。

1. クンプラ邸・インコー(設計、ユッシ・カッリオプスカ)
 マツやシラカバの森に囲まれた海の近くにある1万平方メートルの広大な敷地の南端に住宅を配置。モダンな住宅ながら、スカンジナビア地方で昔からみられるベンガラ色の壁と黒い切妻屋根を用いた。

2. フットネン邸・クロサーリ島(設計、リスト・フットネン、スビィ夫妻)
 目前に厚い岩盤が迫る眺望が圧巻の、3戸の集合住宅。岩盤を採掘して得た1、2階を地下扱いとし、地上4階建てを縦に3つに割ったプランとした。3住戸ひとつながりにしたテラスは、3家族でバーベキューなどを楽しむオープンスペース。

3.  マッティラ邸・アースラ島(設計、ミンナ・ルカンダー)
 女性建築家が両親のために設計した切妻屋根の伝統的なログハウス。30年前に建てられた母屋と調和するよう、古い教会で使われていたパイン古材を譲り受け、幅5メートル、奥行き4メートルのワンルームとした。

4. ミッコラ邸・ミルッコヌンミ(設計、ユーリア・ミッコラ)
 40年以上前にオーナーの兄であるキルモ・ミッコラによって設計されたサマーハウス。現在は同じく建築家であるオーナーの娘のユーリアがリノベーションを手掛ける。日本の木造軸組構造の影響を受けたという、1メートルモジュールで構成されている。

 記事は事例のみ。どの事例も大自然が素晴らしく、その環境を最大限生かしている。特に2.のフットネン邸は、寝室の窓から巨大な岩の壁が眺められる様子がまさに圧巻。しかし、国土全体が岩盤質の地層から成り立っているフィンランドでは、決して珍しい光景ではないというから驚きだ。

 また、4.のサマーハウスは、日本建築にヒントを得て1メートルを基本のモジュールとして3×6メートルのグリッドで空間を構成しているというが、確かにスケール感や質感が日本家屋かと見間違えるほどだ。




◇特集 [アウトドアスペースがもたらす光と風] 【★★★☆☆】

 屋外、半屋外の空間を生かした住まいを紹介。事例は以下の4件。

1. P邸・オーストリア・グラーツ(設計、ベルンハルト・ショーンヘル)
2階南側にリビングとフラットにつながる幅18メートルのデッキを配する

2. I邸・関東(設計、椎名英三)
ダイニングからつながる33平方メートルの「アウタールーム」が家の主役

3. S邸・奈良県奈良市(設計、大江一夫)
中庭、水盤、生活の3つのステージを持つ住まい

4. W邸・愛知県(設計、玉木直人)
1階には風呂に面したタイル張りの中庭、2階に大デッキ

 次に、アウトドアスペースの魅力について解説。まずプランニングのポイントとして、室内外を一体化させる、プライバシー確保のための壁を設置する、などが指摘されている。また、より実用的なアウトドア空間への提案として、造作家具を設置する、温熱環境を整える、役割を付加する、などが挙げられている。

 以前に本誌に掲載された物件ながら、上記4件以外にも事例は豊富。その他、アウトドア空間で使うインテリアのカタログ、木製やステンレスなど開口部のサッシにフォーカスを当てた事例4件もついている。




◇記事 [複数のバスルームを持つ] 【★★★☆☆】

 バスルームの記事では、これまで幾度となく欧米の乾式パスルームを、それもメインとサブで2つ以上持つことを提案してきた本誌だが、今回はその名もズバリ「複数のバスルームを持つ」。

 まず欧米と日本の風呂文化の違いについて述べ、日本でもライフスタイルが変化し、子供も9歳を超えると一人で入浴するようになること、夏場はシャワーのみで済ませる人が多いこと、家族の入浴時間がまちまちなことなどから、やはり複数のバスルームをお勧めしている。

 その際ネックとなるのが、バスルームの広さと家全体の床面積の関係。日本ではバスタブの外に洗い場と脱衣室が必要なため、風呂が占める割合が多くなる。そこで、床面積別に複数のバスルームを持つためのプランニングについて言及している。

 親子で完全にバスルームを分ける場合には150平方メートル以上がひとつの目安。さらに300平方メートル以上ならば各個室やゲストルームにそれぞれ専用のバスルームを設ける例もある、とし、事例を交えて紹介。

 もう何度も書いているかもしれないが、この提案は日本の風呂文化を否定されているようで受け入れがたい。やはりある程度の年齢まで風呂は家族で入り、浴槽にはゆっくりつかるのが日本人だと思うのだ。





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[今号の評者、建築&住宅メディア研究会 殿木真美子]

◇殿木真美子(とのきまみこ)
ライター。雑誌編集者を経て、結婚を機に1998年からフリーに。現在は一男一女の子育てに追われながら、夫とともに編集・制作会社を運営している。子供を持ってからはより現実的な教育、住宅分野へ興味が移る。最近リノベーションと転居を経験。都心へ「一歩」近づいた。

◇建築&住宅メディア研究会
代表/細野透

会員/家成俊勝、大津なほ子、北原さと子、黒崎敏、神徳香子、今野靖人、
殿木真美子、奈良賢史、萩原詩子、守山久子、脇坂圭一

Posted by 管理者 at 11時30分

2013年05月10日(金)

[日経ホームビルダー]2013年4月号 [日経ホームビルダー]

[日経ホームビルダー]2013年4月号・日経BP社・定価1600円


◇特集[リフォームで伸ばす“新”住宅流通] 【★★★☆☆】

 国交省も力を入れている「中古流通+リフォーム」。実際に取り組む企業が増えているようです。ただ、新築ビジネスとは違い、ローンや税制優遇の申請、工事の打ち合わせなど、仕事の進め方が煩雑なのが難点。特集では、不動産会社や建設会社にノウハウを伝えるフランチャイズ企業に取材しています。

 京都市のハウスドゥは、物件情報の量を切り札に、大型店舗「住宅情報モール」を展開。土地・中古住宅の仲介に加え、新築、リフォーム、買い取り再販などすべての要望に対応することで集客力と成約率を高めました。この方法に、従来型の仲介営業マンはなかなか対応できず、新卒や未経験者の育成に力を入れているそうです。

 「買い主に徹底的に寄り添う」を基本姿勢とし、売り主に耐震改修も負担させているのが東京都新宿区のリニュアル仲介。約600社の仲介会社と約60社の建築会社を会員とし、無償建物インスペクションなどを提供しています。

 建築デザイン事務所出身の東京都渋谷区リノベるは、ウェブマーケティングを活用して中古マンション仲介とリノベーション工事をワンストップで提供。全国13都市に自らの拠点を、残りは101のエリアに分けてFC本部を置く方針を立てています。

 不動産仲介大手のセンチュリー21・ジャパンも、パナソニックのリフォームネットワークRefineと組んで仲介+リフォームの総合サービス「Reborn21」をスタート。知名度の高い大手フランチャイズ同士の連携のゆくえが注目されます。

 まとめの「解説」では、ホームビルダー誌が取材を通して考えた「中古仲介ビジネスでビッグチャンスをつかむ鉄則5カ条」を紹介。「リフォームをセットにすべし」「買い主の不安を取り除くべし」という新しいビジネスのポイントや、時代を反映した「出口戦略を示すべし」が挙がります。また「仕事の手離れを悪くすべし」「情報をつまびらかにすべし」の2カ条は、従来型の仲介ビジネスを反面教師とする項目になっています。




◇特集[住宅会社全国調査2013 多角化で元気な住宅会社] 【★★★☆☆】

 特集1本目が中古流通とリフォームのワンストップサービスに乗り出すFC企業を取材しているのに対し、2本目は住宅会社の新しいビジネスに焦点を当てています。

 長野県松本市のスマイルハウスと青森県八戸氏のハシモトホームは、いずれも中古住宅を買い取ってリフォームし、販売する再販事業に取り組んでいます。新築より割安で、ターゲットは予算に余裕のない20〜30歳代の一次取得者層。

 この事業では、中古住宅を買い取るという先行投資が課題。過剰在庫のリスクがあります。スマイルハウスでは、フラット35の適合証明書や瑕疵保証を付けて顧客の中古に対する不安を払拭。ハシモトホームは仕入れを築20年以内の築浅物件に限定し、その多くを競売で落としています。
 また、高齢者対応に取り組む住宅会社も多数。
 盛岡市のシリウスは2005年から子会社のシリウスケアサービスでグループホームやデイサービス、ショートステイの介護施設を運営しています。土地が安く、高齢者が多い地域であることが利益率の高さにつながっているようです。

 また、千葉市のトミオ社長の大澤成行さんは、介護サービス関連事業をストック型事業と位置づけ「そのベースがあるおかげで、注文住宅事業ではターゲットを絞って望ましい顧客と付き合えるような余裕が生まれてきた」と語ります。

 多角化の目的は、単純に収益を増やすことだけにとどまらないようです。




◇新連載[密着 戸建て買い取り再販]【★★★☆☆】

 この号からは4本の新連載がスタート。1本は、特集とも連動する「戸建て買い取り再販」です。

 特集では戸建て買い取り再販に取り組む住宅会社も登場しているものの、中古の再販事業はマンションが主流。この連載では、戸建て買い取り再販に参入するリビタに密着します。プロジェクトのフローを追う構成で、第一回のテーマは「買い取り」。

 買い取り対象の物件を探すまでに、リビタが目を通した物件は実に1000件超。売れ残りや売り主が売り急いでいるような一癖ある物件を中心に探したことが突破口になりました。記事では、事前の確認内容や現場調査のポイントも列挙。実務的な内容です。

 ユニークなのが、契約後・リノベ前にリビタ自ら近隣住人への挨拶まわりを行っていること。「建物をリノベーションして売って終わりにはしたくない」という配慮が光ります。

 ほか、新連載は「危ない軸組」「屋根下地が泣いている」「住宅性能入門 省エネ」の3本です。




[今号の評者、建築&住宅メディア研究会 萩原詩子]

◇萩原詩子(はぎわらうたこ)
文系住宅ライター。就職雑誌を編集するつもりで入った会社で住宅雑誌編集部に。以来約二十年、住宅とその周辺の取材を続けている。著書に「住宅リフォームの値段としくみがわかる本」、共著に「住宅購入チェックリスト」(ともに東洋経済新報社)がある。

◇建築&住宅メディア研究会
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