2008年05月16日(金)
[建築雑誌]4月号 [建築雑誌]
◇ 特集[拡張する「私んち」?]【★★☆☆☆】
「私んち」?とは、本特集担当編集委員の杉浦久子さんによると、「『私の家』という概念から少しはみだしたオルタナティブな『私の家的なるもの』」。現代見えにくくなっている「公共性」を、「私性」の側から探ろうとする試みだ。
以下の事例が紹介される。
偏在する「私性」:
マンガ喫茶制覇フィールドワーク(北川啓介)
表出する「私性」:
ネット販売の古本屋リブロニワース顧問佐藤正哲氏インタビュー
杉浦ゼミによる私んち、私達んち
コメント:
社会工学の土肥真人
社会学の鈴木謙介
アーティストの川俣正
アーティストの西野達
「公共性」という手強いテーマを正面から扱おうとする意欲は立派。ただ、「私性」を起点に逆説的に迫るアプローチで、「私化される公共空間」が問題視されている今、その殻を破って公共性の萌芽を果たして見出しうるのか。
成功したとしても、公と私を対比する根拠すらもはや失うのではないか。
◇ 特集[建築の展覧会を考える]【★★☆☆☆】
大西正紀編集委員の担当。1920年代堀口捨己らの分離派建築会展(百貨店など)から、1986年ポストモダンの建築展(国立近代美術館)、2007年伊東豊雄・新しいリアル展までをたどる。
近年、話題の建築展の企画、運営に携わった学芸員、キュレーターたちの言葉が並ぶ。
遠藤信行:ギャラリー間
長谷川祐子:21世紀美術館SANAA展
寺田真理子:Towards Total Scape,バラガン展など
野村しのぶ:東京オペラシティアートギャラリー
酒井一光:大阪歴史博物館
平昌子:宮本佳明展、リスボン建築トリエンナーレ
米山勇:江戸東京博物館
保坂健二朗:国立近代美術館
清田とき子:国際交流基金芸術交流部
建築学会は、120年の歴史で初めての自発的な企画“アーキニアリング”展を準備しており、本特集はこれと関連している。同学会斎藤公男会長インタビューによると、「芸術としての建築と技術としての建築の融合」が主題のようだが、そのわりに本特集には、「技術(エンジリアリング)としての建築」に関する展覧会が入っていない。
◇ コラム[ゴミ御殿は、現代建築の問題となり得るか]【★★★★☆】
小説家平野啓一郎氏のコラム。現代芸術ではゴミの展示もありだが、芸術に限りなく近い料理では「うまくかつ安全」は必須。では建築はどうか。「ゴミ御殿」は芸術扱いされても、建築としては評価の対象外だろうか。
この巻頭コラムが、本号の2つの難特集の謎かけになっている・・・。
「ゴミ御殿」は、拡張する「私んち」?
新たな公共性の概念を生む可能性は?
「ゴミ御殿」は、建築展の主題になるか?
建築を社会に開くきっかけになる?
[今号の評者、建築&住宅メディア研究会 岡部明子]
◇岡部明子(おかべあきこ)
建築家、千葉大学准教授。スペイン、バルセロナに10年暮らすうちに、関心が建築単体から都市や地域へとシフト。現在は、EUレベルの環境・地域・空間政策を中心に調査研究。合わせて、脱近代思想の公共空間論を模索中。著書に「ユーロアーキテクツ」「サステイナブルシティ」(学芸出版社)、「持続可能な都市」(共著、岩波書店)ほか。
◇建築&住宅メディア研究会
代表:細野透
会員:今井早智、岡部明子、今野靖人、殿木真美子、萩原詩子、平塚桂、守山久子
Posted by 管理者 at 11時30分
