2009年11月02日(月)
[建築知識]11月号 [建築知識]
◇特集[一生訴えられない『地盤・基礎』トラブル回避術]【★★★★★】
保険・保証はどこまで付ければ安心か?
地盤と基礎。重要であるにもかかわらず、ややもすると実務者からスルーされがちなテーマを扱っている。「保険・紛争編」、「地盤知識編」、「調査編」、「設計編」の4部構成だ。
「保険・紛争編」では、瑕疵担保保険や地盤保証といった今日的な話題に触れる。瑕疵担保履行法は、工務店などの住宅供給者を対象とするものだ。ただし保険加入の際には「設計施工基準」を満たす必要があるから、設計者も十分に理解しておかなければならない。
後半の「調査編」と「設計編」では、実作業のノウハウを解説する。事前調査における地形図や古地図などのデータ活用法、試験データの読み方、基礎の補強筋の入れ方、地盤補強工事のトラブル対策といった実務的な内容が並ぶ。
一方、間にはさまった「地盤知識編」も、10ページという短さだが、ごく基本的な内容を分かりやすくまとめている。
地盤が全体的に悪くて建物が一方向に傾く場合より、建物が局所的に変形するほうが重大な損傷を招く。つまり、「住宅地盤の調査では、荷重うんぬんより、いかに地盤の不均質性を見抜くかということのほうが大事」(藤井衛・東海大学教授)など、注意すべきポイントを端的に指摘してくれる。
また、木造住宅をべた基礎でつくる場合の接地圧は人間の足裏の接地圧とほぼ同じになるというように、具体的にイメージしやすいたとえを挿入しているのも理解の助けになる。
「地盤」という言葉を聞くとちょっと腰がひけてしまっていた人たちも、1冊目の参考書にどうぞ。
◇特別付録[瑕疵担保時代の『地盤調査』徹底解説ビデオ]【★★★★☆】
地盤調査のプロセスをビデオで見せる。耐震補強を多く手がけてきた匠建築の保坂貴司氏と、地盤などの調査を行う報国エンジニアリングの金哲鎬氏、小西謙一氏が先生役を務め、実際の事例を通して調査の要点を説明する。
敷地に行く前に調べること、現地調査で確認するポイント、スウェーデン式サウンディング試験の実施方法、調査結果のデータの読み方などを指南する。スウェーデン式サウンディング(SWS)試験では、自沈層に当たると何の抵抗もなくロッドがすとんと地中にめり込んでいく様子も見られて面白い。
またSWS試験では、支持力が換算N値10程度になるとロッドは貫入しなくなる。しかし、その下に支持力の低い層が横たわっている可能性もあるため、貫入不可になった場所がそのまま支持層となるわけではない点も注意喚起する。
本誌の特集も合わせて読むと、SWS試験に頼り過ぎないことの重要性が伝わってくる。
◇連載[現場の矜持] 【★★★☆☆】
1本目の柱で「勝負」が決まる クレーンオペレーター/千葉清和
実にさまざまな分野の職人が登場し、建築現場の幅広さと奥深さを教えてくれるこの連載。今回は、ひときわ渋いクレーンオペレーターの登場だ。
千葉清和さんは言う。「建方のとき、クレーンに向って左右に倒れている柱は起こしやすいのですが、前後に倒れている柱は起こすのが難しいんです。これをすっと立てて、しかも一切揺らさない。これができれば<このオペ(オペレーター)はやるな>と相手に伝わります」。
なるほどインタビュアーがもらしたように、まるで「剣豪小説」のような世界。このほか、敷地までの路地が狭くてほかのクレーンオペレーターが辞退したケースもあったという。
「わが社は他社と比べると若干リース料が高いかもしれません。でも、どんなに悪条件の現場でも社員全員にやり遂げる技術と自信があるから、継続して注文がいただけているんです」と千葉さん。
どの分野でも、技術を磨くことが自社の競争力を高める王道である点に変わりはなさそうだ。
★この雑誌を購入する[今号の評者、建築&住宅メディア研究会 守山久子]
◇守山久子(もりやまひさこ)
住宅・建築ライター。ゼネコン在籍後、バブル期の大量中途採用に紛れて出版社へ転職、2003年からフリーのライターに。著書に「家族と財産を守る耐震リフォーム」(週刊住宅新聞社)、「デザインエクセレントな経営者たち」(共著、ダイヤモンド社)など。
◇建築&住宅メディア研究会
代表/細野透
会員/家成俊勝、大津なほ子、岡部明子、北嶋祥浩、北原さと子、黒崎敏、神徳香子、今野靖人、殿木真美子、萩原詩子、平塚桂、守山久子
Posted by 管理者 at 11時30分
2009年10月28日(水)
[Casa BRUTUS]2009年10月号 [Casa BRUTUS]
◆[Casa BRUTUS]2009年10月号・マガジンハウス・特別価格980円
◇ 特集[日本建築、美術・デザインの基礎知識。PART3] 【★★★★☆】
先月京都、今月日本と、カーサの特集は「和モノ」続きです。特にこの、日本の「基礎知識」シリーズは、過去2回の特集がそれぞれムックに仕立て直されているほどで、かなりの人気企画と思われます。
PART1・PART2は、「基礎知識」らしく、数寄屋や茶室を中心に幅広く取り上げていましたが、PART3は「戦国」に焦点を絞っています。コアな戦国ファンには物足りない内容かもしれませんが、思えば、城郭や兜について書いた教科書は少ないのでは。少なくとも私には新鮮でした。アイテム別に、STEP1〜6に分けた構成です。
STEP1[城] 「城は見た目が命」と断じ、その見どころ「天守」と「石垣」の「デザインポイント」を解説します。伝統建築との比較を通じて、城郭建築の特殊性を明らかにする2ページが秀逸。
STEP2[兜] ドラマでお馴染み「愛の前立て兜」や、鳥毛飾り付き兜もさることながら、1ページ大の写真で紹介される、漆黒の兜の数々が珍しい。まるでオブジェのような造形美。
STEP3[陣羽織] 緋色に金の縁かがり、金と黒の市松模様、白地に赤い水玉・・・改めて並べて見せられると、陣羽織のデザインはかなりモダン。「戦国武将おしゃれグランプリ」も楽しい。ちなみにグランプリは「伊達政宗」でした。
STEP4[やきもの] 戦国(桃山時代)に生まれた焼きもの、織部・黄瀬戸・志野。それぞれの魅力を、北大路魯山人の言葉を引いて解説。
STEP5[屏風] 美術館のガラスケースの奥に鎮座する「屏風」が、本来はインテリアアイテムだったことを思い出させてくれる記事。出産時専用の珍しい「白絵屏風」も。
STEP6[掛軸] 掛け軸の基本構造、裂地の格、表具の真・行・草など、「基礎知識」特集ならではのうんちくが勉強になります。
◇ 記事[日本全国・城下町ガイド‘09] 【★★★☆☆】
「戦国特集」との連動企画。城下町・彦根、高松、島原、川越、津和野、松本の見どころを1〜2ページで紹介。漫画家ほしよりこによる「カーサの猫村さん」が萩、角館を訪ねます。
「今行きたい城下町40」はおすすめの城と城下町を日本地図上にマッピング。天守が現存しているのか、それとも復興・模擬天守閣なのかを色分けしています。そこ肝心ですね。
◇ 記事[デザインイベント・プレビュー] 【★★★☆☆】
まもなく始まる東京デザイナーズウィーク(TDW)、デザインタイド、デザインタッチのガイド。会期が5日と短いので、事前に予定に入れておかないと見逃しかねません。今年は、TDWのメイン会場・神宮外苑、デザインタイドのメイン会場・ミッドタウンに加え、伊勢丹新宿店も参加するそう。
ほか、都内各所の関連イベントには、会期を超えて開催されるものもあり。主なイベントが8ページにまとまったこの記事は、スケジュールを立てるのに役立ちます。
★この雑誌を購入する[今号の評者、建築&住宅メディア研究会 萩原詩子]
◇萩原詩子(はぎわらうたこ)
文系住宅ライター。就職雑誌を編集するつもりで入った会社で住宅雑誌編集部に。以来十余年、住宅とその周辺の取材を続けている。著書に「住宅リフォームの値段としくみがわかる本」、共著に「住宅購入チェックリスト」(ともに東洋経済新報社)がある。
◇建築&住宅メディア研究会
代表:細野透
会員/家成俊勝、大津なほ子、岡部明子、北嶋祥浩、北原さと子、黒崎敏、神徳香子、今野靖人、殿木真美子、萩原詩子、平塚桂、守山久子
Posted by 管理者 at 11時30分
2009年10月27日(火)
[a+u]2009年10月号 [a+u]
◆[a+u]2009年10月号・株式会社エー・アンド・ユー・2500円
◇特集[ウッツォン、フェーン、そしてデンマークとノルウェーの建築]【★★★★☆】
ヨーン・ウッツォン(1918−2008)
スヴェール・フェーン(1924−2009)
ウッツォンとフェーン。北欧が生んだ2人の巨匠のDNAが、その出身国でいかに引き継がれているのか、という切り口がユニークです。
巻頭はヨーン・ウッツォンの遺作にして息子キム・ウッツォンとの共作「ウッツォン・センター」(デンマーク、オールボー)。自身の記念館を息子とともに20年をかけて故郷につくり、完成を確かめてから亡くなったウッツォン。さすが20世紀で最もドラマティックなコンペ「シドニーオペラハウス」の勝利者は、最後まで劇的です。
スヴェール・フェーンの作品では「ヘードマルク博物館」(ノルウェー、ハーマル)と「国立建築博物館」(ノルウェー・オスロ)が登場。建築博物館はウッツォン・センターと同様に、自分自身を表彰する性格も持っていそうです。
◇エッセイ[ノルウェー建築]【★★★★☆】
執筆は吉田未玲さん。珍しく日本人による批評を掲載しています。が、面白い。スヴェール・フェーンの影響下にない若手建築家が台頭しつつある、という最新の建築事情や、スノヘッタの展覧会での外務大臣による「建築は国家の重要なツールになった」というスピーチに代表される、国家戦略としての建築支援の傾向などを報じています。後のページでまとめて紹介されている「ナショナル・ツーリスト・ルート・プロジェクト」も国家プロジェクトの1つ。ノルウェー各地に展望台などを設け、新しい風景と観光ルートをつくるもので、国を挙げてのくまもとアートポリス、という印象です。
◇作品[ノルウェーの木造建築]【★★★★☆】
ノルウェーといえば日本と同様に木造文化を持つ国ですが、木造でも積層式の構法をつかっている点が大きな違いといえそうです。積層パネルを組み合わせた「パルピット・ロック山岳ロッジ」(ストランド)や、マツの端材を隙間をあけて積み上げた東屋「子供たちの暖炉」(トロンヘイム)など、プレファブ的な構法を使いながら木の膨張特性や風合いを生かしたもの。防火性能がどうなっているのか謎ですが(そもそも法律がぜんぜん違う?)、「積む木造」が新鮮で面白いです。
★この雑誌を購入する[今号の評者、建築&住宅メディア研究会 平塚桂]
◇平塚桂(ひらつかかつら)
ライター。主に建築について一般誌中心に執筆。たかぎみ江とともに[ぽむ企画]として活動。京都で12年間過ごした後2005年に上京。京都ではデザイン書店「Sfera Archive」店長なども経験。
◇建築&住宅メディア研究会
代表/細野透
会員/家成俊勝、大津なほ子、岡部明子、北嶋祥浩、北原さと子、黒崎敏、神徳香子、今野靖人、殿木真美子、萩原詩子、平塚桂、守山久子
Posted by 管理者 at 11時30分
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