建築雑誌オールレビュー

代表/細野透
会員/家成俊勝、大津なほ子、岡部明子、北嶋祥浩、北原さと子、黒崎敏、神徳香子、今野靖人、
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2009年11月05日(木)

[商店建築]2009年11月号 [商店建築]

[商店建築]2009年11月号・商店建築社・2040円


◇特集[丸の内ブリックスクエア]【★★★☆☆】
 
 「三菱一号館」(東京都千代田区)と、その周辺域を含めた再開発、丸の内ブリックスクエアを取り上げる巻頭記事。全27ページと、ひとつの施設を扱うにはかなり大きなボリュームです。

 ページをめくる限りでは、「三菱一号館」とタワー棟、アネックス棟が、調和しているように見えません。巻末記事「一号館復元から発展させたデザインコンセプト」の説明を読むと、バラの図像やアイアンワークなど“一号館モチーフ”のコラージュと、「煉瓦、石、アイアンワーク」という素材の統一や「凹凸、陰影、ストライプ」という貼り方のルールの統一から、一号館との融合を図った、とのこと。イメージや素材の種類を揃えることで調和がつくり出せる、という前提の根拠がわかりません。「三菱一号館」の徹底的にかつての構法や素材を再現した復元と気ままな商業施設とのアンバランスさばかりが印象に残ります。

 ほとんど建物の感想になってしまいましたがページ構成に触れると、まず広場の植栽計画からはじまるのが新鮮。かなり印象的な庭なので、もう少し詳しい解説があれば。




◇特集[ファッション雑貨店]【★★★★☆】

 メガネ店やバッグ店、アクセサリーショップなど、ファッション雑貨店のインテリアは、相変わらず面白いですね。

 ちなみに以前、「建築雑誌」2009年6月号で飯島直樹氏にその理由を伺ったところ、

1.飲食業界の調子が落ち、物販、特にあまり高額ではない商品を扱う店舗が元気。
2.JCDデザインアワードの応募数も、飲食よりも物販へとシフトする傾向にある。
3.物販で建築家の活躍が目立つのは、安い素材でも立体的で視覚的にインパクトある空間をつくれるから。

と、このように分析していました。

 今回の特集で気になったのは、路面店が多いことと、そのインテリアにお外っぽさがある点です。例えばルスティカ積みモチーフの「HIROKO HAYASHI」(東京都中央区)や、街路と連続するような大きなテーブルがある「カンペール表参道」(東京都渋谷区)、聖堂風のヴォールト天井が奥へと続く「ジャスティン デイビス」(大阪市中央区)というように、外との連続性をいかにつくるか、ということが重要なようです。

 付帯記事も必読。「LIVON 表参道」(東京都渋谷区)を手がけたエイスタディの齊藤良博さんと、「サマンサタバサ新宿ルミネ店」(東京都新宿区)の冨川浩史さんに、コンサルティングやコミュニケーションを重視し、完成までに一体感や人的ネットワークを構築するようなデザイン手法を聞いています。




◇特集[バーカウンターのデザイン]【★★★★☆】

 前半は、井口幸蔵さんと、兼城祐作さんが語る、バーカウンターの計画学。カウンターを壁と垂直や平行にせず、角度をつけると、目の錯覚を利用して広さを感じさせることができる、とか、足を置くフラットバーを15度程度イス側に傾けると掛け心地がよい、などと、具体的です。

 そして後半は、過去2年に掲載したバーカウンターを抽出し、写真と図面、コメントから紹介するというリサイクル企画。18店舗を同じ体裁で1ページずつ紹介する、都市リサーチ風のつくりが面白い。詳細図は断面図が多く、床の防水からカウンターの見付けまで説明していて、実用性がありそうです。





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[今号の評者、建築&住宅メディア研究会 平塚桂]

◇平塚桂(ひらつかかつら)
ライター。主に建築について一般誌中心に執筆。たかぎみ江とともに[ぽむ企画]として活動。京都で12年間過ごした後2005年に上京。京都ではデザイン書店「Sfera Archive」店長なども経験。

◇建築&住宅メディア研究会
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Posted by 管理者 at 11時30分

2009年11月04日(水)

[庭]190号 [庭]

[庭]190号・建築資料研究社・2940円


◇連載〔日本の庭 巡礼 京都北村美術館 四君子苑の庭〈下〉〕【★★★★☆】

 前号に続き、京都市上京区の「北村美術館四君子苑庭園」を紹介。今回は園内に点在する石燈籠や石塔、水鉢などをクローズアップし、作庭した佐野越守の弟子である石造工芸士の西村金造氏がその一つひとつを仔細に解説する。

 全部で46にもおよぶ石造美術品の多くは、鎌倉時代の作。中には平安時代のものとおぼしき品もあり、表門近くの滋賀県南郷石を使った「三重の塔」は、塔身の長さに独特の特徴が見られ、高麗からの帰化人の手によるものではないかと西村氏は推測する。希少な石造美術品の数々の収集にかけた北村謹次郎の熱情もさることながら、これだけ膨大な作品を庭のしかるべき場所に配しながら空間を造形した佐野越守の手腕にはただ目をみはらされるばかりだ。

 対談「優美な庭の世界を守る」では、42年間にわたって四君子苑の庭を守ってきた池田忍氏と西村氏が、庭園、北村謹次郎、佐野越守について語り合う。この庭にもともとあったのは何本かのムクノキ、エノキ、クヌギだけで、佐野越守は作庭にあたってまず庭じゅうに木を植えられるだけ植えてから、間引いていくことでたたずまいを整えていったのだという。

 広間の軒内に敷き詰められた真黒石(まぐろいし)は、どの石よりも黒いからと賀茂川から採取したものだそうである。色にムラがなく、大きさも揃った敷石は工芸品的な美しさを見せるが、こちらも実際に敷いた何倍もの量の石を採ってきて、そこから選び抜いた石だけを使うという「引き算の造作」がなされている。

 北村謹次郎は、茶事があれば2か月も前から朝晩の打ち水を欠かさなかったという。杉苔ではなく、自然に生える苔が好きだったからだそうだが、そうしたエピソードの数々によって、彼が「稀代の数寄者」と呼ばれたゆえんが浮き彫りにされる。




◇特集〔雑木を植え、楽しむ〕【★★★★☆】

 かつては見向きもされなかった雑木は、里山が失われて自然林が減少するようになってから珍重されるようになり、庭に採り入れようとする人が増えてきた。だが、自然林の育て方は非常に難しく、家と調和させることも容易ではない。せっかく植えても落ち葉掃除が大変だからと、簡単に切ってしまう例も多いようだ。

 この特集では、雑木をいち早く採り入れて既成の庭から脱し、「小島流」と呼ばれる様式を作った京都の名庭匠・小島佐一の門下生で、44年前から自邸に雑木を大切に育ててきた寺下弘氏(近江庭園代表)の庭を訪問。季節感あふれる雑木の魅力と、その手入れのヒントを探る。

 グラビアを見て驚かされるのは、軒先のコナラの幹が、40年以上前に植えられたとは信じ難い細さを保ち、樹高も低く抑えられていること。インタビューに答えて、寺下氏は言う。
「見さかいもなく、ただ枝を短く切り詰めるような強剪定は、子供の躾でいえば虐待に繋がります。元気のない者を叱っても仕方ありません。それよりも逆に励ますでしょう。木だって同じです」。

 人間の教育と同様、愛情を注ぎながら「こう育って欲しい」という理念に基づいて手入れをしなければ、木は思うように生育しないと寺下氏は主張する。また、あらゆる角度やシチュエーションを考慮し、障子に映る夜の枝の影の様子まで考えて植え、剪定しなければならないとも。

 雑木の庭の素晴らしさを実感させられるとともに、寺下氏のその厳しい姿勢に、素人が生半可な気持ちで雑木を植えたのでは、やはり手を余すのだろうなとも改めて思わせられた。




◇連載〔現代の庭を創る 作庭家 河西 力 人間の可能性〕【★★★☆☆】

 モダンアートのように直線と曲線を巧みに組み合わせる造作をすることで、若手作庭家から圧倒的な支持を受ける河西力氏の、代表的な次の3作を紹介。

 ●世界救世教 平安郷研修センター(京都府京都市)
 ●花崎邸(静岡県富士市)
 ●小林邸(静岡県伊東市)

 世界救世教平安郷研修センターのエトランスとそれに続く前庭の、立面の石積から平面の石張へと連続する意匠は、まさに河西氏特有の技法。各施設は水景で結ばれ、建物の直線と浅い流れが描く緩やかな曲線の印象的なコントラストもまた、河西イズムの真骨頂である。

 芝生の鮮やかな緑の中をさらさらと水の流れる、静岡県伊東市の小林邸の庭は、河西氏の最新作。浅い水底にはところどころにカラフルなタイルが配され、流れに沿って植えられたシダレウメやシダレザクラと色彩を呼応させるなど、ディテールにも細やかな工夫が凝らされている。

 河西氏は自作解説で、時代に合わせて庭を創るのではなく、自己の作庭思想を諸々の条件のもとで最大限表現すれば、おのずと新しいものを創ることにつながると述べる。また、時間の経過は庭を古くするのではなく、例えば延段の目地が鮮苔に覆われればむしろその新しい命に目を向けるべきだと、独自の作庭観、自然観を披歴している。




[今号の評者、建築&住宅メディア研究会 今野靖人]

◇今野靖人(こんのやすひと)
フリーランスライター。各種広告コピーから旅行ガイドブック、落語の脚本までジャンルを問わず執筆。

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Posted by 管理者 at 11時30分

2009年11月02日(月)

[建築知識]11月号 [建築知識]

[建築知識]11月号・エクスナレッジ・特別定価1995円


◇特集[一生訴えられない『地盤・基礎』トラブル回避術]【★★★★★】
 保険・保証はどこまで付ければ安心か?


 地盤と基礎。重要であるにもかかわらず、ややもすると実務者からスルーされがちなテーマを扱っている。「保険・紛争編」、「地盤知識編」、「調査編」、「設計編」の4部構成だ。

 「保険・紛争編」では、瑕疵担保保険や地盤保証といった今日的な話題に触れる。瑕疵担保履行法は、工務店などの住宅供給者を対象とするものだ。ただし保険加入の際には「設計施工基準」を満たす必要があるから、設計者も十分に理解しておかなければならない。

 後半の「調査編」と「設計編」では、実作業のノウハウを解説する。事前調査における地形図や古地図などのデータ活用法、試験データの読み方、基礎の補強筋の入れ方、地盤補強工事のトラブル対策といった実務的な内容が並ぶ。

 一方、間にはさまった「地盤知識編」も、10ページという短さだが、ごく基本的な内容を分かりやすくまとめている。

 地盤が全体的に悪くて建物が一方向に傾く場合より、建物が局所的に変形するほうが重大な損傷を招く。つまり、「住宅地盤の調査では、荷重うんぬんより、いかに地盤の不均質性を見抜くかということのほうが大事」(藤井衛・東海大学教授)など、注意すべきポイントを端的に指摘してくれる。

 また、木造住宅をべた基礎でつくる場合の接地圧は人間の足裏の接地圧とほぼ同じになるというように、具体的にイメージしやすいたとえを挿入しているのも理解の助けになる。

 「地盤」という言葉を聞くとちょっと腰がひけてしまっていた人たちも、1冊目の参考書にどうぞ。




◇特別付録[瑕疵担保時代の『地盤調査』徹底解説ビデオ]【★★★★☆】

 地盤調査のプロセスをビデオで見せる。耐震補強を多く手がけてきた匠建築の保坂貴司氏と、地盤などの調査を行う報国エンジニアリングの金哲鎬氏、小西謙一氏が先生役を務め、実際の事例を通して調査の要点を説明する。

 敷地に行く前に調べること、現地調査で確認するポイント、スウェーデン式サウンディング試験の実施方法、調査結果のデータの読み方などを指南する。スウェーデン式サウンディング(SWS)試験では、自沈層に当たると何の抵抗もなくロッドがすとんと地中にめり込んでいく様子も見られて面白い。

 またSWS試験では、支持力が換算N値10程度になるとロッドは貫入しなくなる。しかし、その下に支持力の低い層が横たわっている可能性もあるため、貫入不可になった場所がそのまま支持層となるわけではない点も注意喚起する。

 本誌の特集も合わせて読むと、SWS試験に頼り過ぎないことの重要性が伝わってくる。




◇連載[現場の矜持] 【★★★☆☆】
 1本目の柱で「勝負」が決まる クレーンオペレーター/千葉清和


 実にさまざまな分野の職人が登場し、建築現場の幅広さと奥深さを教えてくれるこの連載。今回は、ひときわ渋いクレーンオペレーターの登場だ。

 千葉清和さんは言う。「建方のとき、クレーンに向って左右に倒れている柱は起こしやすいのですが、前後に倒れている柱は起こすのが難しいんです。これをすっと立てて、しかも一切揺らさない。これができれば<このオペ(オペレーター)はやるな>と相手に伝わります」。

 なるほどインタビュアーがもらしたように、まるで「剣豪小説」のような世界。このほか、敷地までの路地が狭くてほかのクレーンオペレーターが辞退したケースもあったという。

 「わが社は他社と比べると若干リース料が高いかもしれません。でも、どんなに悪条件の現場でも社員全員にやり遂げる技術と自信があるから、継続して注文がいただけているんです」と千葉さん。

 どの分野でも、技術を磨くことが自社の競争力を高める王道である点に変わりはなさそうだ。





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[今号の評者、建築&住宅メディア研究会 守山久子]

◇守山久子(もりやまひさこ)
住宅・建築ライター。ゼネコン在籍後、バブル期の大量中途採用に紛れて出版社へ転職、2003年からフリーのライターに。著書に「家族と財産を守る耐震リフォーム」(週刊住宅新聞社)、「デザインエクセレントな経営者たち」(共著、ダイヤモンド社)など。

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