2009年12月15日(火)
[日経ホームビルダー]2009年12月号 [日経ホームビルダー]
◆[日経ホームビルダー]2009年12月号・日経BP社・定価1600円
◇特集[“性能リフォーム”提案の極意] 【★★★☆☆】
「性能リフォーム」とはバリアフリー、省エネルギー、耐震の「性能向上」を目的としたリフォームのこと。いずれも住宅政策上の推進テーマであり、税金の優遇措置が設けられています。ただ、バリアフリーはまだしも、省エネや耐震は住む人にとって改修の必要性も効果もわかりにくいのが難点。ゆえに「提案の極意」が求められるのでしょう。
特集は、3人の「達人」に「リフォーム検討者へのヒアリング」と「200万円以内で収まる改修案の作成」を依頼。その様子を同業のプロと一緒に実況、解説します。
「バリアフリー改修の達人」高齢者住環境研究所の溝口千恵子さんのヒアリングは、住まい手への細やかな配慮が印象的。初回の打ち合わせでは不安や悩みを打ち明けやすい空気をつくる、相手に不安感を与えないよう危険個所はやんわり伝える、などの態度が信頼につながりそう。改修案も、自立生活ができている今のうちに改修しておきたいこと、介護認定が受けられる65歳を待ってから行うこと、に分けられていて、説得力があります。
「省エネ改修の達人」カザマ技研開発の風間勝廣さんは、データで勝負。過去の施工例の改修前後の温湿度データだけでなく、光熱費削減のシミュレーションも提示。そこに、自宅での実体験を語ることで肉付けします。見積もりでは、断熱改修に加えて換気設備の費用と効果を盛り込んだり、窓断熱に2通りの方法を示したりと、住まい手に選択肢を提供します。費用対効果をきっちり説明しているところに信頼性を感じました。
耐震改修は、性能リフォームの中でも最もわかりにくいテーマだけに、専門家の誠意と説得力が問われます。「達人」匠建築の保坂貴司さんは、一般診断法より広範囲な調査を実施し、「あえて補助金を使わない選択肢」まで踏み込んで提示。地盤対策では200万円の方法と、20万円ですむ応急措置を提案します。「今できること」「将来実施すべきこと」を分けて解説しており、住まい手も決断しやすいでしょう。
3人とも「達人」の名に恥じない仕事ぶり。そのせいか、取材に同行したプロのコメントは、ほんの一言ずつしか入っていないのがもったいない。達人と取材同行者によるプロ同士の意見交換も聞きたかったところです。
◇リポート[瑕疵保険導入、揺れる現場] 【★★★★☆】
10月に全面施行された「住宅瑕疵担保履行法」。住宅会社にとっては、保険加入のための図書作成、現場検査対応、建て主への説明など仕事が増えるだけでなく、保険料を自社負担する例もあるそうです。
リポートでは、住宅会社と保険法人、国土交通省への取材、実務者へのアンケートを通じて、多角的に現場の実態をあぶり出します。
保険法人による保険料の違いや、現場検査員の対応のまずさ、事務手続きの面倒などは、どんな仕事の現場にもままある不満でしょう。消費者として気になるのは、現場検査員や構造設計者による以下のような指摘。
「瑕疵保証と比べると瑕疵保険の現場検査が簡略になったことが気がかりだ」(瑕疵保険と瑕疵保証の現場検査をともに経験した検査員)「耐力壁関連などの瑕疵が発生しやすくなったのではないかと心配だ」
「瑕疵保険の現場検査だけでは、建物の構造耐力が建築基準法に適合していることをチェックしきれないだろう」(設計事務所勤務の構造設計者)
書類の記載方法や手続きなどは、制度が定着するにつれて整理されていくでしょうが、「そもそも、瑕疵保険の検査はこれでいいのか」が検証されることはあるのでしょうか。将来、大きな地震が起きて初めて問題発覚、などということにならなければいいのですが・・・。
◇ニュース[ほころび現れた完成保証]【★★★★☆】
一方、10年前に制度設計された「完成保証」。先のアーバンエステート倒産でも保証契約が履行されなかったことが問題になりました。
不景気下で住宅会社の破綻が相次ぐ中、制度そのものがほころびつつあるようです。記事は、工務店1000社が加入する最大の完成保証制度「ビルダー共済会」の解散を報じます。その背景には、工務店の間に生じた受注や信用の格差があるとのこと。「互助精神を基本とする信用補完時代が過ぎ去り、過払い防止の流れが強まる」と結論づけます。
「ホームビルダー」誌が今年6月号の特集に取り上げた「工事代金の支払時期のグレーゾーン」が思い出されるところ。着工前に3〜4割を請求し、資材代金の先払いなどに充てるという会社が大半でしたが・・・。
住宅会社にとっては、ますます厳しい時代になりそうです。
[今号の評者、建築&住宅メディア研究会 萩原詩子]
◇萩原詩子(はぎわらうたこ)
文系住宅ライター。就職雑誌を編集するつもりで入った会社で住宅雑誌編集部に。以来十余年、住宅とその周辺の取材を続けている。著書に「住宅リフォームの値段としくみがわかる本」、共著に「住宅購入チェックリスト」(ともに東洋経済新報社)がある。
◇建築&住宅メディア研究会
代表:細野透
会員/家成俊勝、大津なほ子、岡部明子、北嶋祥浩、北原さと子、黒崎敏、神徳香子、今野靖人、殿木真美子、萩原詩子、平塚桂、守山久子
Posted by 管理者 at 11時30分
2009年12月09日(水)
[建築知識]12月号 [建築知識]
◇特集[『瑕疵担保×長期優良×改正省エネ』快速クロスチェック]【★★★★☆】
建てられません、読むまでは!
通称「瑕疵担保履行法」「長期優良住宅法」「改正省エネ法」。2009年に施行された住宅関連の3つの法規の要点を、比較しながら解説する。執筆者は、第三者検査・認証機関であるビューロベリタスジャパンのスタッフ陣だ。
これら3つの法規は、通称「品確法」を介して間接的につながっている。
まず省エネ法の判断基準が、品確法で定める住宅性能表示制度の「温熱環境」に関する評価基準に反映されている。また品確法で求める瑕疵担保責任の履行を確実にするため瑕疵担保履行法を制定し、品確法で定めた性能表示等級は長期優良住宅の認定基準に活用されている。
冒頭でこうした関係と各法規の要点をまとめた後、建物の部位別にそれぞれの法規で定められた項目を比較整理していく。ここでは地盤や基礎配筋に始まり、軸組、維持管理、耐震、断熱、外壁防水など19の項目を抽出している。
最後は、3法に加えて建築確認、品確法、住宅金融支援機構のローン「フラット35」の手続きや検査の流れをまとめたページと、3法に関する申し込み書類の書き方を解説したページで締めくくる。
3法の要点もなかなか煩雑だが、最後の手続き・検査の流れや申し込み書類を見ると、さらに頭がパンクしそうになる。手続きに要する手間と時間はさぞ膨大なものだろう。
せめて、これらの書類の一元化や、1回記入すれば手続きごとの書類を作成してくれるソフトの開発といった対処はできないものか。設計者や施工者のエネルギーは、もっと良い建物づくりに費やしてほしい。
◇連載[最高の学校を設計する方法]【★★★☆☆】
アルコーブ・クワイエットルームの設計
シーラカンスK&Hの工藤和美さんによる連載。
オープン形式を採用する小学校では、落ち着ける小空間の提供も欠かせない。そんな狙いから、大空間に小さな凹み「アルーブ」を用意した事例や、さらに扉を閉じて静かな環境を与える「クワイエットルーム」を設けた事例を紹介している。
登場するのは、富山市立芝園中学校と福岡市立博多小学校だ。
ちなみに、ガラスの引き戸で仕切られたクワイエットルームはオフィスや公共施設の喫煙室と雰囲気が似ている。もちろん、狭い空間に喫煙者がひしめき合う喫煙室に比べ、こちらはずっと気持ち良さそうだけれども。
◇連載[超図解!『建築ストック×法規』入門] 【★★★☆☆】
避難安全検証法を使った改修とは?
既存建物を用途変更する際、空間をできるだけ有効活用するために避難安全検証法を使いこなす方法を紹介する。
例えば平屋建ての倉庫を物販店にする場合、一般には防火区画を行って、防煙下がり壁や排煙窓などを設置しなければいけない。しかし避難安全検証法を用いて安全性を証明すると、防煙下がり壁や排煙窓の設置、内装制限などの規定が緩和され、設計の自由度が高まるというわけだ。
今号の記事では、避難安全検証法のごく大枠を説明している。このほか、手続きにどのくらいの時間を要するのか、店舗の場合テナント工事との関係はどうかなども整理していただけるとありがたい。
★この雑誌を購入する[今号の評者、建築&住宅メディア研究会 守山久子]
◇守山久子(もりやまひさこ)
住宅・建築ライター。ゼネコン在籍後、バブル期の大量中途採用に紛れて出版社へ転職、2003年からフリーのライターに。著書に「家族と財産を守る耐震リフォーム」(週刊住宅新聞社)、「デザインエクセレントな経営者たち」(共著、ダイヤモンド社)など。
◇建築&住宅メディア研究会
代表/細野透
会員/家成俊勝、大津なほ子、岡部明子、北嶋祥浩、北原さと子、黒崎敏、神徳香子、今野靖人、殿木真美子、萩原詩子、平塚桂、守山久子
Posted by 管理者 at 11時30分
2009年12月08日(火)
[住宅建築]12月号 [住宅建築]
◇特集[堀部安嗣 近作六題 空間生成の鼓動]【★★★★☆】
堀部安嗣さんの特集は2007年2月号、2008年10月号に続き、今回が3度目です。このペースで特集が組まれるのは珍しく、本誌や読者から注目が高いのだと感じます。
今回は近作6題を紹介するとともに、堀部さんの語りやスケッチなどを通して、空間が出来るまでのプロセスにも触れています。ラストには建具廻りなどの納まり詳細図集もあり、住宅造りのお手本と言っても良さそうな特集です。
住宅は次の6題と、堀部さんと松山厳さんの論文がそれぞれ1題づつ、さらに堀部さんと平良敬一さんとの対談があります。
「青葉台の家」…明快な秩序が生む豊穣な空間
「芦屋川の家」…オムニバスのように紡がれた空間
「調布の家」…十字形のスキッププランがもたらす広がり
「馬込の家」…法規制のなかで探る建築の成り立ち
「玉川上水の家」…周辺環境から導きだされた佇まい
「軽井沢の家」…ありのままの柱がつくる居場所
堀部さんは、子供時代からお寺をよく見に行っていて、そこに建築の接し方の基礎があるようです。住宅の設計をしていて「この家お寺みたいだなあ」と思うこともしばしばあるとのこと。そこで今回は、「お寺のように見える」とはどういうことなのかを自身で見つめています。
その大きな要素は「たっぷり軒の出た、勾配のある均整のとれた美しい屋根」と答えています。大きな屋根にはそれを支えるため、力学的に釣り合いのとれた秩序ある構造ができ、立面が整っていきます。また深い軒がつくる影の佇まいや、雨風などから人々を守る役割も含め、日本の風景にある屋根を眺めると、安心感が得られると語っています。
「美しい屋根を架けること」が今の試みだそうです。見開きで、これまでの住宅の屋根伏スケッチが描かれ、数えてみると33戸もありました。数学的とも言える気持ちよい形をしていて、屋根伏だけで家を見るのも楽しく、空間構成も明快に見えてきます。
設計する上で、与条件などがせめぎあい混沌とした中で、気候や風景に対して合理的な屋根をかけようと平面を練り直していくと、不思議と本質的な問題の解決につながるそうです。「青葉台の家」では、始めは並列に配置されていた2世帯住宅プランが、ある時均整のとれた、十字形プランに変わる過程のスケッチ図が紹介されています。
そこでシステマティックな家ばかりかと思うと、そうとも言えない家もあります。対談では住宅設計の本質は秩序立てを見つけることよりも、「人と場所と時間の関係」を見つけることだと言っています。理屈だけでは語れない美しさはそこにあるのでしょうか。
家のタイトルがその特徴を表すこともありますが、堀部さんの住宅のタイトルはいつもその場所の名前です。そこにもそれとなく堀部さんらしさが漂う気がしました。
◇特別記事[丹下健三の戦没学徒記念若人の広場]【★★★★★】
兵庫県淡路島の南端の山頂に、太平洋戦争中、戦場に駆り出され戦死した、若い学徒達を追悼するための建物がひっそりと建っています。石垣で覆われた資料展示室・会議室の先に、細いアプローチが真直ぐに伸び、先端に高さ25Mの塔が象徴的にそびえています。
設計は、丹下健三氏。現在この建物の存在は既知とは思いますが、当時建築家として全盛期でありながら、1967年の竣工時はある「理由」によって建築雑誌などには掲載されず、知られざる丹下作品とされていたようです。
この記事の主軸である松隈洋さんの論文に、その「理由」も説明されています。七頁にわたるぎっしりつまった文章は大変読み応えがあります。戦争があった実感が生々しく残る時代へ一気に入りこんでいきます。
前半では戦争の背景、建設までの経緯が語られています。建築家が戦争や社会とどう関わっていたか、等身大の姿を垣間見れるような部分が多々ありました。安保問題のあった時に新聞で文章を発表したり、街頭デモをしようと言い出し、本郷から皇居の間まで隊列を組んで歩いている間、丹下さんの腕はぷるぷると震えていたそうです。
後半は、戦時下に提出されたコンペの「大東亜記念営造計画」と「在盤谷日本文化会館」の話から、丹下さんの建築思想の話へと展開していきます。根幹にあったものは、近代建築における記念碑的造形(=モニュメンタリズム)だと語られています。
「戦没学徒を記念する広場」は、財団法人の経営が破綻して閉鎖状態となり、さらに阪神大震災によって建物や石塀が壊れ、現在は廃墟のような状態にあります。建物写真はモノクロで紹介されていて、少し見づらいところもありましたが、戦争と廃墟がシンクロするような感覚になりました。
「平和を記念するための施設は、平和を創り出すという建設的なものでなければならない」。広島ピースセンター建設時の丹下さんの言葉を添えつつ論文の終盤は、施設をどんな形で再び稼動させていくのか問いかけています。
◇連載 欧羅巴建築見聞記 第7回[フィン・ユール邸]【★★★☆☆】
フィン・ユールと言うと、北欧の家具作家としてのイメージが非常に強く、一般的にも建築家としての業績はあまり知られてないようです。住宅が数軒、映画館、店舗などを手掛けながら現存するものがなく、その中で彼の処女作であり、生涯を過ごした自邸(1942年)が、貴重な住宅作品として残っています。
建物は逆L字型で分かりやすい平面をしています。L字型の折れ目部分である小さな玄関部を挟んで、居住ゾーンと、応接・アトリエゾーンが配置されています。外壁は白一色ですが、中央の玄関だけテイストを変えたビビッドカラーをしています。ある方向から見ると、玄関が沈んで、切り妻型の平屋が2棟並んでいるように見え面白いです。
室内には彼がデザインした椅子や机などの家具が置かれ、ファンにとっては超贅沢な内部写真が紹介されています。ファンでなくとも、空間と家具、窓からの光や森の景色、壁に飾られている絵画がみごとに調和されて、シンプルながら漂う品格が写真からも伝わります。
図面に縮尺がないのですが、おおよそ200平方メートル近くありそうなこの家は、小住宅という書かれ方になっています。我が国で考えると平屋でこれだけあれば十分な広さですね。全く余談ながら、フィンユール邸を、日本で再現するプロジェクトも進行しているようなのです。日本で感じるその空間も是非体験したいものです。
★この雑誌を購入する[今号の評者、建築&住宅メディア研究会 北原さと子]
◇北原さと子(きたはら さとこ)
建築設計家。京都の外れで育ち、大学で勉強した後、山本良介アトリエで「京都建築道」を修行。京都の良さを身に染みて感じるようになりました。2005年に北原さと子建築設計室を設立。現場1000回。とにかく通う!が私流です。
◇建築&住宅メディア研究会
代表/細野透
会員/家成俊勝、大津なほ子、岡部明子、北嶋祥浩、北原さと子、黒崎敏、神徳香子、今野靖人、殿木真美子、萩原詩子、平塚桂、守山久子
Posted by 管理者 at 11時30分
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