建築雑誌オールレビュー

代表/細野透
会員/家成俊勝、大津なほ子、北嶋祥浩、北原さと子、黒崎敏、神徳香子、今野靖人、殿木真美子、
   萩原詩子、平塚桂、守山久子、吉川彰布、脇坂圭一

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2009年12月16日(水)

[新建築 住宅特集]1月号 [新建築 住宅特集]

[新建築 住宅特集]1月号・新建築社・定価2000円


◇九軒の住宅 【★★★★☆】

 まずは、藤森照信氏と大嶋信道氏が手がけた、「チョコレートハウス」の外壁に銅板を用いた独特な雰囲気に目が留まった。藤森氏が試行錯誤の結果生み出した「手曲げ」「裾折り」「適宜、貼り重ね」の手法を使い、「縄文建築団」がつくりあげていくことで、独特な素朴感を放つ。

 これは、住宅史の流れの中に自分のスタイルを探すのではなく、もっと原初的な「銅」や「炭」といった素材に向き合うことで独自のスタイルを模索するやり方から生まれてくると、藤森氏の文章を読んでわかる。これは、後で出てくる「原邸の家学び」で原氏が言った、集落調査の過程からもっと原初的な自然の中にスタイルを求める方法と重なる。この住宅は12ページに渡り、豊富な図面と多くの写真で紹介され、とてもわかりやすく解説している。

 その他、リカルド・レゴレッタ(メキシコ)を彷彿とさせる色のついた壁に囲まれた住宅は、どこか日本を感じさせる上品な色づかいと、開口の構成が巧みな「K house」等、力作揃いである。

 九軒の住宅は以下となる。

 チョコレートハウス
  藤森照信+大嶋信道(大嶋アトリエ)

 K house
  入江経一+Power Unit Studio

 Steel−Truss
  木村博昭+Ks Architects

 赤堤の住宅
  長谷川逸子・建築計画工房

 花鳥風月+水の家
  竹内巌/ハル・アーキテクツ

 大安寺の家
  飯田善彦建築工房

 空方の家
  堀尾浩建築設計事務所

 湘南のコートハウス
  高野保光/遊空間設計室

 八潮T.B. 8.19m角の栖
  中辻正明+中辻雅江 中辻正明・都市建築研究室




◇ 建築家自邸からの家学び 第3回 後編 原邸【★★★★☆】

 「原邸」の特集の後編である。インタビューでは、芝浦工業大学教授の堀越英嗣氏がポジティブに受け、多面的に会話を広げていく。原氏の建築観がたくさんの言葉を用いて語られていき、読む者をグイグイ惹き付けるインタビューとなっている。

 後半は堀越研究室の研究調査で、妙喜庵待庵、カップマルタンの休暇小屋等、様々な居住空間のダイヤグラムを比較し、30年経過しでもなお、古びてない形態の秘密はどこにあるのかを明確に解き明かしている。

 このシリーズが始まって半年経ち、大学の研究室とのコラボレーションが上手に板についた感じだ。内容もそれぞれ工夫があり、建築をつくるサイドにとって、貴重な資料として積みあがってきている。これは、もはや新たな建築雑誌の新たな境地に達したコーナーと言っても過言ではない。




◇ [展覧会]【★★★★☆】
 
 年末・年始にかけて魅力的な展覧会が写真付で紹介されている。この記事は展示会を知る上で大変参考になる。

 なお、ほとんどの展覧会のホームページのURLが書かれており、ネットで詳しく調べることができる。しかしながら、私的には、アドレスをキーボードで入力するのが億劫と感じてしまう。贅沢な望みを言うのなら、今の時代、ホームページのバーコードを印刷していただけると、より重宝する情報となろう。

 「展覧会」の案内にある、私が前に勤めていた内井昭蔵先生の思想と建築の展覧会に行ってきた。親子三代にわたる建築業績の展示会でもある。ロシア正教会の信者であった内井先生は、その精神性から生まれる真摯な姿勢が後に「健康」という言葉を生み、晩年、「マスターアーキテクト」に代表されるように多くの建築家集団によるものづくりの手法へと繋がっていく。そんな先生の功績がつまった展示会であった。





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[今号の評者、建築&住宅メディア研究会 北嶋祥浩]

◇北嶋祥浩(きたじまよしひろ)
建築家。北海道の大地で動物たちに囲まれながら育つ。内井昭蔵建築設計事務所勤務後、2006年にアビエルタ建築・都市を琵琶湖湖畔に設立。琵琶湖の波の音を聞くためにPCやFAX等の音の出るモノは全て倉庫に追いやり遠隔操作。代わりにフルート、ケーナ、ピアノ、中華なべ、リキュールとおよそ事務所に似つかわしくないモノに囲まれながら設計に勤しむ。 生命体のような「しなやかな建築」をめざす。

◇建築&住宅メディア研究会
代表/細野透
会員/家成俊勝、大津なほ子、岡部明子、北嶋祥浩、北原さと子、黒崎敏、神徳香子、今野靖人、殿木真美子、萩原詩子、平塚桂、守山久子


Posted by 管理者 at 11時30分

2009年12月15日(火)

[日経ホームビルダー]2009年12月号 [日経ホームビルダー]

[日経ホームビルダー]2009年12月号・日経BP社・定価1600円


◇特集[“性能リフォーム”提案の極意] 【★★★☆☆】

 「性能リフォーム」とはバリアフリー、省エネルギー、耐震の「性能向上」を目的としたリフォームのこと。いずれも住宅政策上の推進テーマであり、税金の優遇措置が設けられています。ただ、バリアフリーはまだしも、省エネや耐震は住む人にとって改修の必要性も効果もわかりにくいのが難点。ゆえに「提案の極意」が求められるのでしょう。

 特集は、3人の「達人」に「リフォーム検討者へのヒアリング」と「200万円以内で収まる改修案の作成」を依頼。その様子を同業のプロと一緒に実況、解説します。

 「バリアフリー改修の達人」高齢者住環境研究所の溝口千恵子さんのヒアリングは、住まい手への細やかな配慮が印象的。初回の打ち合わせでは不安や悩みを打ち明けやすい空気をつくる、相手に不安感を与えないよう危険個所はやんわり伝える、などの態度が信頼につながりそう。改修案も、自立生活ができている今のうちに改修しておきたいこと、介護認定が受けられる65歳を待ってから行うこと、に分けられていて、説得力があります。

 「省エネ改修の達人」カザマ技研開発の風間勝廣さんは、データで勝負。過去の施工例の改修前後の温湿度データだけでなく、光熱費削減のシミュレーションも提示。そこに、自宅での実体験を語ることで肉付けします。見積もりでは、断熱改修に加えて換気設備の費用と効果を盛り込んだり、窓断熱に2通りの方法を示したりと、住まい手に選択肢を提供します。費用対効果をきっちり説明しているところに信頼性を感じました。

 耐震改修は、性能リフォームの中でも最もわかりにくいテーマだけに、専門家の誠意と説得力が問われます。「達人」匠建築の保坂貴司さんは、一般診断法より広範囲な調査を実施し、「あえて補助金を使わない選択肢」まで踏み込んで提示。地盤対策では200万円の方法と、20万円ですむ応急措置を提案します。「今できること」「将来実施すべきこと」を分けて解説しており、住まい手も決断しやすいでしょう。

 3人とも「達人」の名に恥じない仕事ぶり。そのせいか、取材に同行したプロのコメントは、ほんの一言ずつしか入っていないのがもったいない。達人と取材同行者によるプロ同士の意見交換も聞きたかったところです。




◇リポート[瑕疵保険導入、揺れる現場] 【★★★★☆】

 10月に全面施行された「住宅瑕疵担保履行法」。住宅会社にとっては、保険加入のための図書作成、現場検査対応、建て主への説明など仕事が増えるだけでなく、保険料を自社負担する例もあるそうです。

 リポートでは、住宅会社と保険法人、国土交通省への取材、実務者へのアンケートを通じて、多角的に現場の実態をあぶり出します。

 保険法人による保険料の違いや、現場検査員の対応のまずさ、事務手続きの面倒などは、どんな仕事の現場にもままある不満でしょう。消費者として気になるのは、現場検査員や構造設計者による以下のような指摘。

「瑕疵保証と比べると瑕疵保険の現場検査が簡略になったことが気がかりだ」(瑕疵保険と瑕疵保証の現場検査をともに経験した検査員)「耐力壁関連などの瑕疵が発生しやすくなったのではないかと心配だ」

 「瑕疵保険の現場検査だけでは、建物の構造耐力が建築基準法に適合していることをチェックしきれないだろう」(設計事務所勤務の構造設計者)

 書類の記載方法や手続きなどは、制度が定着するにつれて整理されていくでしょうが、「そもそも、瑕疵保険の検査はこれでいいのか」が検証されることはあるのでしょうか。将来、大きな地震が起きて初めて問題発覚、などということにならなければいいのですが・・・。




◇ニュース[ほころび現れた完成保証]【★★★★☆】

 一方、10年前に制度設計された「完成保証」。先のアーバンエステート倒産でも保証契約が履行されなかったことが問題になりました。

 不景気下で住宅会社の破綻が相次ぐ中、制度そのものがほころびつつあるようです。記事は、工務店1000社が加入する最大の完成保証制度「ビルダー共済会」の解散を報じます。その背景には、工務店の間に生じた受注や信用の格差があるとのこと。「互助精神を基本とする信用補完時代が過ぎ去り、過払い防止の流れが強まる」と結論づけます。

 「ホームビルダー」誌が今年6月号の特集に取り上げた「工事代金の支払時期のグレーゾーン」が思い出されるところ。着工前に3〜4割を請求し、資材代金の先払いなどに充てるという会社が大半でしたが・・・。

 住宅会社にとっては、ますます厳しい時代になりそうです。




[今号の評者、建築&住宅メディア研究会 萩原詩子]

◇萩原詩子(はぎわらうたこ)
文系住宅ライター。就職雑誌を編集するつもりで入った会社で住宅雑誌編集部に。以来十余年、住宅とその周辺の取材を続けている。著書に「住宅リフォームの値段としくみがわかる本」、共著に「住宅購入チェックリスト」(ともに東洋経済新報社)がある。

◇建築&住宅メディア研究会
代表:細野透
会員/家成俊勝、大津なほ子、岡部明子、北嶋祥浩、北原さと子、黒崎敏、神徳香子、今野靖人、殿木真美子、萩原詩子、平塚桂、守山久子


Posted by 管理者 at 11時30分

2009年12月09日(水)

[建築知識]12月号 [建築知識]

[建築知識]12月号・エクスナレッジ・特別定価1890円


◇特集[『瑕疵担保×長期優良×改正省エネ』快速クロスチェック]【★★★★☆】
 建てられません、読むまでは!


 通称「瑕疵担保履行法」「長期優良住宅法」「改正省エネ法」。2009年に施行された住宅関連の3つの法規の要点を、比較しながら解説する。執筆者は、第三者検査・認証機関であるビューロベリタスジャパンのスタッフ陣だ。

 これら3つの法規は、通称「品確法」を介して間接的につながっている。

 まず省エネ法の判断基準が、品確法で定める住宅性能表示制度の「温熱環境」に関する評価基準に反映されている。また品確法で求める瑕疵担保責任の履行を確実にするため瑕疵担保履行法を制定し、品確法で定めた性能表示等級は長期優良住宅の認定基準に活用されている。

 冒頭でこうした関係と各法規の要点をまとめた後、建物の部位別にそれぞれの法規で定められた項目を比較整理していく。ここでは地盤や基礎配筋に始まり、軸組、維持管理、耐震、断熱、外壁防水など19の項目を抽出している。

 最後は、3法に加えて建築確認、品確法、住宅金融支援機構のローン「フラット35」の手続きや検査の流れをまとめたページと、3法に関する申し込み書類の書き方を解説したページで締めくくる。

 3法の要点もなかなか煩雑だが、最後の手続き・検査の流れや申し込み書類を見ると、さらに頭がパンクしそうになる。手続きに要する手間と時間はさぞ膨大なものだろう。

 せめて、これらの書類の一元化や、1回記入すれば手続きごとの書類を作成してくれるソフトの開発といった対処はできないものか。設計者や施工者のエネルギーは、もっと良い建物づくりに費やしてほしい。




◇連載[最高の学校を設計する方法]【★★★☆☆】
 アルコーブ・クワイエットルームの設計


 シーラカンスK&Hの工藤和美さんによる連載。

 オープン形式を採用する小学校では、落ち着ける小空間の提供も欠かせない。そんな狙いから、大空間に小さな凹み「アルーブ」を用意した事例や、さらに扉を閉じて静かな環境を与える「クワイエットルーム」を設けた事例を紹介している。

 登場するのは、富山市立芝園中学校と福岡市立博多小学校だ。

 ちなみに、ガラスの引き戸で仕切られたクワイエットルームはオフィスや公共施設の喫煙室と雰囲気が似ている。もちろん、狭い空間に喫煙者がひしめき合う喫煙室に比べ、こちらはずっと気持ち良さそうだけれども。




◇連載[超図解!『建築ストック×法規』入門] 【★★★☆☆】
 避難安全検証法を使った改修とは?


 既存建物を用途変更する際、空間をできるだけ有効活用するために避難安全検証法を使いこなす方法を紹介する。

 例えば平屋建ての倉庫を物販店にする場合、一般には防火区画を行って、防煙下がり壁や排煙窓などを設置しなければいけない。しかし避難安全検証法を用いて安全性を証明すると、防煙下がり壁や排煙窓の設置、内装制限などの規定が緩和され、設計の自由度が高まるというわけだ。

 今号の記事では、避難安全検証法のごく大枠を説明している。このほか、手続きにどのくらいの時間を要するのか、店舗の場合テナント工事との関係はどうかなども整理していただけるとありがたい。





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[今号の評者、建築&住宅メディア研究会 守山久子]

◇守山久子(もりやまひさこ)
住宅・建築ライター。ゼネコン在籍後、バブル期の大量中途採用に紛れて出版社へ転職、2003年からフリーのライターに。著書に「家族と財産を守る耐震リフォーム」(週刊住宅新聞社)、「デザインエクセレントな経営者たち」(共著、ダイヤモンド社)など。

◇建築&住宅メディア研究会
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