2009年12月18日(金)
[Casa BRUTUS]2010年1月号 [Casa BRUTUS]
◆[Casa BRUTUS]2010年1月号・マガジンハウス・定価880円
◇ 特集[建築・デザインのベストヒット100] 【★★★★☆】
2009年の「ベストヒット」100項目をインターナショナルに網羅する特集。1番から57番までが建築と空間デザインに充てられています。
冒頭、五十嵐太郎×乾久美子対談で、他を圧する評価を受けたのがレム・コールハースのOMAによる「プラダ トランスフォーマー」。ソウルに設置された仮設のパビリオンで、床になる部分を変えながら、約5カ月の間に4回、形を変えました。「09年一番のすごい建築ではないでしょうか」と五十嵐さん。「重力の方向が変わりながら成立する、というのは既存の建築とはまったく問題設定が違います」
国内の建築では、伊東豊雄「座・高円寺」、山梨知彦/日建設計+勝矢武之/NSD「木材会館」、丹下憲孝「モード学園コクーンタワー」、吉村靖孝「ノーウェア・バット・サジマ」、「三菱一号館美術館」、隈研吾「根津美術館」、妹島和世「カリーナ」が取り上げられています。
空間デザインでは、片山正通の一連の作品をラインナップ。今年は国内外で大きいプロジェクトを次々完成させました。国内では「NIKEフラッグシップストア原宿」、「ゴディバ ショコイスト原宿」、丸の内の「パス・ザ・バトン」。来年は、建築デザインディレクションも手掛けた「ザ・ソーホー」のオープンを控えています。
前出の対談では、乾さんが「建築とアートがますます接近している、と感じます」と語っていました。「トランスフォーマー」が建築家による「アートのような建築」ならば、アーティストによる「建築」も取り上げます。
もっとも、大竹伸朗の直島銭湯「Iらぶ湯」(「らぶ」はハートマーク)やオラファー・エリアソンの「サンスペース・フォー・シブカワ」(ハラ ミュージアム アーク)は、「建築」というよりは「インスタレーション」と呼ぶほうがふさわしい感じ。しかし、その境界線は限りなくあいまいになっているようです。
◇ 特集続き[デザインのベストヒット!] 【★★★★☆】
ナンバー58以降はプロダクトを取り上げます。「デコデコでキラキラだったデザインが、実用的なものへとシフトしてきたのが09年の家具のトレンド」とのこと。「価格もそれなりにお手ごろ」。IKEAや無印良品だけでなく、ザ・コンランショップも「お手ごろ価格」のライン「ウェル・コンシダード」を出しています。
一方、照明の話題といえばLED。イルミネーションでも大活躍ですね。LEDならではの薄さを生かした新作に加え、「トロメオ」をはじめとする定番も、LED対応を進めているようです。
68〜70はデザイナーに焦点をあてます。ミラノサローネで発表した映像作品のような時計「リアルタイム」で注目を集めたマルティン・バース、昨春「2年以内にデザイナーを辞める」と宣言したフィリップ・スタルク、フランスのデザイナー4組。
ほか、キーワードに挙げられるのはやっぱり「エコ」そして「リメイク」「リサイクル」「農業」など。日本の伝統工芸のリ・デザインも。最後、100番を飾るのはロナン&エルワンのブルレック兄弟による輪島塗のシリーズでした。
◇ 記事[建築とささやきを交わす内藤礼のアート。] 【★★★★☆】
ニュース記事の中から、建築を舞台にしたインスタレーションを。現在、坂倉準三設計の「神奈川県立近代美術館 鎌倉」で内藤礼の展覧会が開催中です(1月24日まで)。「内藤礼 すべて動物は、世界の内にちょうど水の中に水があるように存在している」という長いタイトル。池に面したテラスや中庭、その隣の外気が入る「彫刻室」など特徴ある建築を生かした展示が行われているそうです。
記事では、建築家・西沢立衛が現地を訪ね、内藤と対談。
「作品と建築と自然と人のどれが主体ということではなく、連続性の中にすべてが感じる対象になればいいなと思います」(内藤)。お天気のいい日を狙って行きたい。
★この雑誌を購入する[今号の評者、建築&住宅メディア研究会 萩原詩子]
◇萩原詩子(はぎわらうたこ)
文系住宅ライター。就職雑誌を編集するつもりで入った会社で住宅雑誌編集部に。以来十余年、住宅とその周辺の取材を続けている。著書に「住宅リフォームの値段としくみがわかる本」、共著に「住宅購入チェックリスト」(ともに東洋経済新報社)がある。
◇建築&住宅メディア研究会
代表:細野透
会員/家成俊勝、大津なほ子、岡部明子、北嶋祥浩、北原さと子、黒崎敏、神徳香子、今野靖人、殿木真美子、萩原詩子、平塚桂、守山久子
Posted by 管理者 at 11時30分
2009年12月17日(木)
[新建築]12月号 [新建築]
◇作品[プンタ・デラ・ドガーナ再生計画]【★★★★☆】
設計は安藤忠雄建築研究所。実業家フランソワ・ピノー氏からの依頼で、サンマルコ広場の対岸にある「海の税関(Punta della Dogana)」を、美術館に改造したプロジェクトである。ピノー氏は、グッチグループを傘下に置くPPRグループの持ち主であり、世界で最も規模の大きいオークションハウスのクリスティーズを所有しているという大富豪である。
安藤氏とピノー氏の付き合いは長い。1996年に出会った後、2001年安藤氏がセガン島ピノー現代美術館のコンペで勝利するも、行政の整備が追いつかずピノー氏が美術館建設を断念。その後、PALAZZO GRASSIの再生計画(新建築2006年9月)を経て、今回のプロジェクトに至っている。
プンタ・デラ・ドガーナは、岬の形状に沿った三角平面を、南北方向に壁が短冊状に区切る明快な建築である。本計画では、その建築本来のかたちを尊重し、建設当初のかたちに戻すことを原則とし、煉瓦壁、木造トラス小屋組が露にされる。しかし、後の改造でつくられた場所にも柔軟に対応し、別の命を吹き込む。外観に関しても復元と修復が主であるが、開口部に関しては一部新たなデザインを滑り込ませている。
単なる修復、復元ではなく更新も含め、建設当初の記憶、その後の改修の記憶、そして現在。様々な時間と向き合いながら、絶妙に構成された美術館である。沢山のレイヤーが重なりつつ、一見単純だが、複雑な時間が織り込まれた独特の空間を獲得している。
これは、世界有数の資産家ピノー氏と建築家安藤氏という取り合わせに、プンタ・デラ・ドガーナという歴史的建築物があって実現されているプロジェクトであり、非常に稀な例だろう。
今、我々はそこかしこに余っている匿名の建築物に、どうアプローチするのか考えなければいけない状況が多い。それにしても安藤氏の手掛ける建築は、とても厳しく美しい。ファミリーレストランでメニューを復唱されるようなサービスを享受することに慣れきっている軟弱な我々は、もう一度タフな身体を取り戻さなければいけない。安藤氏は「新旧の衝突と摩擦ー対話こそが、都市の未来をつくる原動力なのだと信じている」と述べている。
◇特集 小さな建築のスケールとディテール【★★★☆☆】
住宅、週末住宅、オフィスと全てで6つのプロジェクトが紹介されている。小さなスケールならではの建ち方、つくり方、構造、温熱環境などをディテールと共に紹介している。
「スモールハウスH」乾久美子建築設計事務所
「House H」藤本壮介建築設計事務所
「O邸」中山英之建築設計事務所
「上馬スモールオフィス」奥山信一研究室
「すごろくハウス」大建met なわけんジム
「上大須賀の家」谷尻誠/suppose design office
スモールハウスHにおいて乾氏は、「風景がかもしだしている中途半端さの理由がわかってきた。要素がバラバラすぎるのだ」、それらの要素が「田舎っぽい雑多さや中途半端さを演出してしまっている」と述べている。
乾氏の目の前にあった風景は整理されておらず、どこにでもある日常の風景だったのである。そんな日常の風景に手がかりを見つけ出しながら建物を配置し、外壁の対角線状に内壁を配置し、漠然と広がる雑多な風景を大きなピクチャーウィンドウにより少しだけ日常から切断することに成功している。言い方を変えれば、風景との結びつきをより濃くすることに成功しているといえるのではないか。
House Hは入れ子状に箱が積み重なっているともいえる。様々な箱は、隣接する箱と連続しながら関係を生み出し、様々に伸縮するように見える。藤本氏は「これは、まったく似てはいないが、一本の木なのではないかと思えてきた」と述べている。木がそこに「ある」ものだとすると、建築はそこに「つくる」ものである。「つくる」ものを「ある」ものに近づけていく時、生活は建築家が用意する場所ではなく、住み手が自ら考える場所に近づいていく気がする。
O邸は2階建ての母屋に下屋が2つ取り付いている構成である。私自身も直接体験したことのあるこの住宅は、母屋は限りなく誰のものでも無いように見えてくる。下屋部分に生活が濃縮されているからだろうか。母屋の外壁がそのままの仕上げで下屋の内壁になる。これは下屋と母屋の関係を一旦断ち切っていると言える。
住人が下屋から母屋に移動する感覚と、住人ではない誰かが道から母屋の大きなガラス越しに家の中を見る感覚は、限りなく近く思える。住人への断絶と住人以外への近接が、個人宅であるにもかかわらず開かれ町に溶け込んでいる要因かもしれない。家具が置かれた状況は、どこかバス停に置かれたベンチと近い状況になるのではないだろうか。
★この雑誌を購入する[今号の評者、建築&住宅メディア研究会 家成俊勝]
◇家成俊勝(いえなりとしかつ)
関西大学法学部、大阪工業技術専門学校夜間部を経てdot architectsを共同で主宰。京都造形芸術大学非常勤講師。大阪工業技術専門学校夜間部非常勤講師。archiforum in OSAKA 2008-2009コーディネーター。設計業務以外にも建築、内装、美術の施工にも関わる。
◇建築&住宅メディア研究会
代表/細野透
会員/家成俊勝、大津なほ子、岡部明子、北嶋祥浩、北原さと子、黒崎敏、神徳香子、今野靖人、殿木真美子、萩原詩子、平塚桂、守山久子
Posted by 管理者 at 11時30分
2009年12月16日(水)
[新建築 住宅特集]1月号 [新建築 住宅特集]
◇九軒の住宅 【★★★★☆】
まずは、藤森照信氏と大嶋信道氏が手がけた、「チョコレートハウス」の外壁に銅板を用いた独特な雰囲気に目が留まった。藤森氏が試行錯誤の結果生み出した「手曲げ」「裾折り」「適宜、貼り重ね」の手法を使い、「縄文建築団」がつくりあげていくことで、独特な素朴感を放つ。
これは、住宅史の流れの中に自分のスタイルを探すのではなく、もっと原初的な「銅」や「炭」といった素材に向き合うことで独自のスタイルを模索するやり方から生まれてくると、藤森氏の文章を読んでわかる。これは、後で出てくる「原邸の家学び」で原氏が言った、集落調査の過程からもっと原初的な自然の中にスタイルを求める方法と重なる。この住宅は12ページに渡り、豊富な図面と多くの写真で紹介され、とてもわかりやすく解説している。
その他、リカルド・レゴレッタ(メキシコ)を彷彿とさせる色のついた壁に囲まれた住宅は、どこか日本を感じさせる上品な色づかいと、開口の構成が巧みな「K house」等、力作揃いである。
九軒の住宅は以下となる。
チョコレートハウス
藤森照信+大嶋信道(大嶋アトリエ)
K house
入江経一+Power Unit Studio
Steel−Truss
木村博昭+Ks Architects
赤堤の住宅
長谷川逸子・建築計画工房
花鳥風月+水の家
竹内巌/ハル・アーキテクツ
大安寺の家
飯田善彦建築工房
空方の家
堀尾浩建築設計事務所
湘南のコートハウス
高野保光/遊空間設計室
八潮T.B. 8.19m角の栖
中辻正明+中辻雅江 中辻正明・都市建築研究室
◇ 建築家自邸からの家学び 第3回 後編 原邸【★★★★☆】
「原邸」の特集の後編である。インタビューでは、芝浦工業大学教授の堀越英嗣氏がポジティブに受け、多面的に会話を広げていく。原氏の建築観がたくさんの言葉を用いて語られていき、読む者をグイグイ惹き付けるインタビューとなっている。
後半は堀越研究室の研究調査で、妙喜庵待庵、カップマルタンの休暇小屋等、様々な居住空間のダイヤグラムを比較し、30年経過しでもなお、古びてない形態の秘密はどこにあるのかを明確に解き明かしている。
このシリーズが始まって半年経ち、大学の研究室とのコラボレーションが上手に板についた感じだ。内容もそれぞれ工夫があり、建築をつくるサイドにとって、貴重な資料として積みあがってきている。これは、もはや新たな建築雑誌の新たな境地に達したコーナーと言っても過言ではない。
◇ [展覧会]【★★★★☆】
年末・年始にかけて魅力的な展覧会が写真付で紹介されている。この記事は展示会を知る上で大変参考になる。
なお、ほとんどの展覧会のホームページのURLが書かれており、ネットで詳しく調べることができる。しかしながら、私的には、アドレスをキーボードで入力するのが億劫と感じてしまう。贅沢な望みを言うのなら、今の時代、ホームページのバーコードを印刷していただけると、より重宝する情報となろう。
「展覧会」の案内にある、私が前に勤めていた内井昭蔵先生の思想と建築の展覧会に行ってきた。親子三代にわたる建築業績の展示会でもある。ロシア正教会の信者であった内井先生は、その精神性から生まれる真摯な姿勢が後に「健康」という言葉を生み、晩年、「マスターアーキテクト」に代表されるように多くの建築家集団によるものづくりの手法へと繋がっていく。そんな先生の功績がつまった展示会であった。
★この雑誌を購入する[今号の評者、建築&住宅メディア研究会 北嶋祥浩]
◇北嶋祥浩(きたじまよしひろ)
建築家。北海道の大地で動物たちに囲まれながら育つ。内井昭蔵建築設計事務所勤務後、2006年にアビエルタ建築・都市を琵琶湖湖畔に設立。琵琶湖の波の音を聞くためにPCやFAX等の音の出るモノは全て倉庫に追いやり遠隔操作。代わりにフルート、ケーナ、ピアノ、中華なべ、リキュールとおよそ事務所に似つかわしくないモノに囲まれながら設計に勤しむ。 生命体のような「しなやかな建築」をめざす。
◇建築&住宅メディア研究会
代表/細野透
会員/家成俊勝、大津なほ子、岡部明子、北嶋祥浩、北原さと子、黒崎敏、神徳香子、今野靖人、殿木真美子、萩原詩子、平塚桂、守山久子
Posted by 管理者 at 11時30分
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